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犬や猫のかゆみ・脱毛は皮膚真菌症かも?|原因・治療・予防を徹底解説

2025.05.09
犬の病気猫の病気

犬や猫に多く見られる皮膚病のひとつに「皮膚真菌症(ひふしんきんしょう)」があります。
これは真菌(カビ)の感染によって引き起こされるもので、代表的なものにはマラセチア性皮膚炎皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)の2種類があります。
どちらも共通する主な症状として、「かゆみ」や「脱毛」が見られます。

しかし、こうした皮膚真菌症は、早めに気づいて適切な治療を始めることで、ほとんどの場合はしっかりと改善が期待できます。

今回は、犬や猫に見られる皮膚真菌症の中でも、とくに多い「マラセチア性皮膚炎」と「皮膚糸状菌症」について、詳しく解説します。

■目次

皮膚真菌症とは?|主な種類と症状


犬や猫に見られる皮膚真菌症の中で、とくに多いのが「マラセチア性皮膚炎」と「皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)」です。

<マラセチア性皮膚炎>
マラセチア性皮膚炎は、「マラセチア」というカビの一種が皮膚に増えすぎて起こる炎症です。
マラセチアは、酵母に似たタイプの真菌で、健康な犬や猫の皮膚にも普段から存在している“常在菌”のひとつです。

通常であれば皮膚に悪さをすることはありませんが、皮膚のバリア機能が弱まったり、免疫力が低下したりすると異常に増えてしまい、炎症を引き起こします

とくに湿気がこもりやすい脇の下、足の指の間、首のまわり、顔、耳の中などにできやすく、皮膚が赤くただれて、ザラつきやベタつきが見られ、独特のカビのようなにおいがすることもあります。

 

<皮膚糸状菌症>
一方で、皮膚糸状菌症は「皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)」という真菌が原因で起こります。

この菌は感染している犬や猫との接触や、その抜け毛やフケなどを通じて、身の回りの環境からうつることがあります。
とくに、まだ免疫力がしっかりと整っていない子犬や子猫、また、加齢や持病などで免疫が落ちている老犬や老猫では発症しやすい傾向にあります。

主な症状は、円形に毛が抜けたり、その部分にフケが見られたりすることです。
かゆみはそれほど強くない場合もありますが、見た目の変化で気づくことが多いです。

また、注意が必要なのは、見た目に症状が出ていなくても菌を保有していることがある点です。その場合、気づかないうちに他の犬や猫、さらには飼い主様へ感染が広がってしまうこともあります。

皮膚糸状菌が人間に感染すると、赤くてかゆみのある円形の湿疹ができるため、ご家族全員での衛生管理が大切です。

皮膚真菌症の発症リスク


皮膚真菌症は、カビの一種である真菌が皮膚に感染することで起こる病気ですが、実は単に菌がついただけでは発症しないことも多いです。
多くの場合、皮膚のバリア機能が弱まっていたり、体の免疫力が落ちていたりすることで、真菌が異常に増え、症状が現れるようになります。

とくに注意が必要なのは、次のような基礎疾患がある犬や猫たちです。

アレルギー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎
クッシング症候群
甲状腺機能低下症

など

また、「マラセチア性皮膚炎」の原因となるマラセチアという真菌は、皮脂をエサにして増えるため、皮脂の分泌が多くなる「脂漏症(しろうしょう)」のある犬や猫も、発症しやすくなります。

さらに、真菌は暖かく湿った環境を好みます。そのため、梅雨から夏にかけての高温多湿な季節は、皮膚真菌症が発生しやすい時期といえるでしょう。

 

診断方法


皮膚真菌症の診断では、まず獣医師が皮膚の状態をよく観察したうえで、いくつかの検査を行って原因を調べていきます。

皮膚検査
患部の皮膚にスライドガラスやセロハンテープを直接当てて、皮膚の表面にいる菌や汚れなどを採取します。
その後、特殊な染色液で染めてから顕微鏡で確認し、真菌が存在するかどうかを調べます。

 

被毛検査
皮膚の異常がある部分の毛を少し抜き、顕微鏡で観察することで、毛の表面や内部に真菌がついていないかを確認します。

 

ウッド灯検査
皮膚糸状菌症が疑われる場合には、「ウッド灯」と呼ばれる特殊な紫外線ライトを使って、暗い場所で皮膚や毛を照らします。
一部の真菌は、この光に反応して緑色に光るため、感染の有無を調べることができます。

 

培養検査
より詳しく調べるために綿棒で皮膚をこすったり、毛を抜いて採取したりして、外部の検査機関に送り、真菌の種類を特定する「培養検査」を行うこともあります。
これによりどの真菌が原因なのかを詳しく知ることができます。

 

その他の検査
皮膚真菌症の背景に基礎疾患が関わっていることもあるため、必要に応じて血液検査などを行い、体全体の健康状態をチェックすることもあります。

 

治療法


皮膚真菌症の治療には、主に「薬用シャンプーを使った薬浴(シャンプー療法)」「外用薬(ぬり薬)」「内服薬(飲み薬)」などが用いられます。
症状や原因となる真菌の種類、皮膚の状態に応じて、適切な治療法が選ばれます。

シャンプー療法(薬浴)
皮膚の状態や原因となる菌に合った薬用シャンプーを使い、患部をやさしく洗い流していく治療です。
余分な皮脂や菌を取り除き、皮膚を清潔に保つことが目的です。ご自宅で行える治療のひとつで、継続的なケアが大切になります。

 

外用薬・内服薬
症状が広範囲に及んでいたり、シャンプーだけでは改善が難しかったりする場合には、真菌を抑える外用薬や内服薬が処方されることもあります。
皮膚の炎症やかゆみが強いときには、抗炎症剤やかゆみ止めが併用されることもあります。

皮膚真菌症は、早期に見つけて軽いうちに治療を始めれば数週間で改善することがほとんどですが、発見が遅れて症状が悪化してしまうと治療期間が長くなることがあります。
とくにマラセチア性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が弱まることが原因で起こるため、一度治っても再発するケースが少なくありません。
そのため、治療が終わったあとも皮膚のコンディションを良い状態に保てるよう、日頃からのスキンケアがとても大切です。

また、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎、内分泌の病気(クッシング症候群や甲状腺機能低下症など)が背景にある場合は、それらの治療もしっかり行うことで、皮膚真菌症の再発予防につながります。

 

家庭でできる予防と管理


皮膚真菌症を予防するには、日頃から皮膚の状態を清潔に保つことが大切です。
ブラッシングやシャンプーを定期的に行い、皮膚や被毛を健康な状態に整えてあげましょう。
ただし、シャンプー剤や洗い方が合っていないと、かえって悪化することがありますので、使うシャンプーやケア方法については獣医師やトリマーに相談するのがおすすめです。

また、過ごす場所の環境も皮膚の健康に関係します。居住スペースや寝具はこまめに掃除・洗濯し、とくに湿気がこもりやすい梅雨や夏場はしっかり換気を行いましょう。

日頃からスキンシップを通して皮膚の様子を観察することも大切です。赤みや脱毛、フケ、においなど、いつもと違う変化に気づいたら、なるべく早めに動物病院を受診してください。

さらに、アレルギーや内分泌の病気が原因で皮膚トラブルが起きることもあるため、定期的な健康診断で体の状態を確認しておくことも大切です。

 

まとめ


皮膚真菌症は、皮膚だけの問題に見えて、実は全身の健康状態と深く関わっていることも少なくありません。
そのため、症状が出たときだけ対処するのではなく、獣医師と連携しながら継続的にケアしていくことが大切です。

また、皮膚真菌症は早期発見・早期治療が何よりも重要です。
「なんとなくいつもと違うかも」と感じたときは、迷わず動物病院へ相談するようにしましょう。

 

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<参考文献>

Bond R, Morris DO, Guillot J, Bensignor EJ, Robson D, Mason KV, Kano R, Hill PB. Biology, diagnosis and treatment of Malassezia dermatitis in dogs and cats Clinical Consensus Guidelines of the World Association for Veterinary Dermatology. Vet Dermatol. 2020 Feb;31(1):28-74.

Moriello KA, Coyner K, Paterson S, Mignon B. Diagnosis and treatment of dermatophytosis in dogs and cats.: Clinical Consensus Guidelines of the World Association for Veterinary Dermatology. Vet Dermatol. 2017 Jun;28(3):266-e68.

 
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