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犬と猫の先天性肘関節脱臼について|1歳未満の成長期に現れる事が多い

2023.12.15
犬の病気猫の病気

脱臼は関節から骨が外れることで、外部から強い力が加わった際に起こります。

また、生まれつきの原因で起こる肘関節の脱臼を、先天性肘関節脱臼と呼び、関節に異常があり生まれつき外れやすい場合は、少しの力でも脱臼を起こしてしまいます。

猫ではまれですが、犬では特定の犬種で起こりやすいと言われており、犬や猫の先天性肘関節脱臼のほとんどは、外科手術による治療が必要です。

今回は犬と猫の先天性肘関節脱臼について解説していきます。

■目次
1.原因|犬では小型犬に多い
2.症状|前足を地面につけない、変な方向に曲がる
3.診断|レントゲン検査で診断できる
4.治療|外科手術で関節を本来の位置に整復する
5.予防法やご家庭での注意点予防|骨や関節が変形する前に見つけて治療

 

原因|犬では小型犬に多い


肘関節は上腕骨と橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)からなる関節で、先天性肘関節脱臼には橈骨のみの脱臼、尺骨のみの脱臼、橈骨と尺骨両方の脱臼の3タイプあります。

最も多いのは尺骨が外側に回転して脱臼するタイプで、ヨークシャー・テリア、トイ・プードル、ポメラニアン、パグ、チワワ、ミニチュア・ピンシャー、ボストン・テリア、ペキニーズといった小型犬での発生が多いとされています。

そして橈骨のみ脱臼するタイプは、ゴールデン・レトリーバーなどの大型犬、シェットランド・シープドッグなどの中型犬、ミニチュア・ダックスフンド、ヨークシャー・テリア、シー・ズー、ペキニーズなどの小型犬と、幅広い犬種での発生が報告されています。
橈骨と尺骨の両方が脱臼するタイプは非常に珍しく、あまり報告がありません

また、先天性肘関節脱臼の素因をもつ犬や猫では、少しの力でも脱臼が起こりやすいため、滑りやすい床などが脱臼の引き金になります。
発症は成長期である子犬や子猫の時期に多く、治療をせずに時間が経つと、本来とは異なる形で固定され、他の骨の成長に影響するため、早めの治療が重要です。

 

症状|前足を地面につけない、変な方向に曲がる


関節から骨が外れているため、前足の変形が見られます。
また、軽い歩き方の異常しか示さない場合もあれば、前足に体重をかけないように歩く場合もあります。

そして、症状は1歳未満の成長期に現れることがほとんどです。

 

診断|レントゲン検査で診断できる


身体検査で前足の変形や肘関節の動きを確認し、レントゲン検査では肘関節から外れた骨を確認します。

 

治療|外科手術で関節を本来の位置に整復する


先天性肘関節脱臼は、成長期に発生しますが、脱臼したままにしておくと他の骨や関節に悪影響を及ぼします。
このため、骨の変形が起こる前に、本来の位置に戻してあげることが重要です。
先天性肘脱臼の治療は、ほとんどの場合、外科手術による肘関節脱臼整復が必要です。

 

予防|骨や関節が変形する前に見つけて治療


脱臼は治療をしなくても命にかかわらないこともありますが、他の骨や関節の異常を招き、後からでは治療が難しくなります。

また、先天性肘関節脱臼のほとんどは成長期に発生しますが、成長期は骨格が作られる時期であり、治癒が早い一方、早くに整復しないと異常な骨格で成長してしまいます。
痛そうにしている様子などがあれば、お早めに受診してください。


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<参考文献>

Fafard AR. Unilateral congenital elbow luxation in a dachshund. Can Vet J. 2006 Sep;47(9):909-12.

Ichinohe T, Fujita Y. Bilateral non-traumatic elbow luxation in a Yorkshire terrier puppy. Can Vet J. 2023 Jan;64(1):34-39. 

 
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