肩関節は肩甲骨と上腕骨の関節で、ここから上腕骨が外れてしまった状態を肩関節脱臼と呼びます。犬でも猫でも起こり、落下や交通事故などが原因になります。
今回はそんな犬や猫で起こる肩関節脱臼について詳しく解説します。
目次
1.原因|外傷性と先天性がある
2.症状|痛みが少ない場合や前足を浮かせて3本足で歩く場合まで、さまざま
3.診断|身体検査とレントゲン検査で脱臼を確認
4.治療|ほとんどの症例で手術が必要
5.予防|肥満に注意! 早期発見が予後を決める
脱臼の原因には、外傷性と先天性があります。
外傷性は、関節に対して無理な外力がかかった場合に起こるため、落下や交通事故、過度に強い力でひっぱる、などが原因になります。
先天性とは「生まれつき」の意味で、肩甲骨関節窩の形成不全など、もともと関節に異常があって脱臼しやすいものを言います。
トイ・プードル、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、チワワなどのトイ犬種やシェットランド・シープドッグなどで多く発生するとされ、少しの力でも脱臼することがあります。なお、犬と比べて猫での発生は少ない傾向にあります。
肩関節脱臼には、上腕骨が内側にずれる内方脱臼と、外側にずれる外方脱臼がありますが、ほとんどは内方脱臼です。
程度によって症状はさまざまですが、脱臼した状態でも痛みを伴うことは少ないため、問題なく歩く犬もいます。
痛みや違和感がある場合は脱臼を起こした方の前足を挙げ、3本足で歩きます。
他に、肩関節のあたりに触ったり、前足を持ち上げたりすると、痛みから鳴いたり怒ったりすることがあります。
脱臼は時間が経つにつれ、骨の変形や関節炎、靭帯の損傷などを起こし、治療が難しくなるため、早くに見つけて治療することが重要です。
身体検査とレントゲン検査で、脱臼を確認します。
CTなどの精密検査が必要な場合もあります。
手術を行う場合は、術前検査として血液検査などを行います。
非観血的に(手術をせずに)関節に骨をはめ直す方法と、手術による整復方法があります。どちらも痛みを伴うため全身麻酔が必要です。
非観血的な整復では、整復後に包帯やギプスでの固定と運動制限が必要です。しかし、治療しても再脱臼を繰り返す場合や痛みを伴う場合は、手術が必要です。
手術には、人工関節を用いる方法や靭帯を再建する方法、関節を固定する方法などがあります。
術式は脱臼の状態や犬猫の大きさ、症状の程度などから検討します。
先天性の肩関節脱臼に関しては、予防法はありませんが、外傷性については落下や交通事故を防ぐことが予防につながります。
また、肥満や高い段差、ジャンプなどは関節に負担をかけるため、肥満防止や床の滑り対策も予防につながるでしょう。
もちろん、早期発見は予後を決める重要な要素です。
日頃から犬猫の様子を確認し、異常があれば早めにご来院ください。
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<参考文献>
Vaughan LC, Jones DG. Congenital dislocation of the shoulder joint in the dog. J Small Anim Pract. 1969 Jan;10(1):1-3.