「夜になると大きな声で鳴き続ける」「そわそわして落ち着かない」「急に甘え方が強くなった」など、愛猫の様子がいつもと変わり、戸惑った経験はありませんか。
避妊手術をしていないメスの猫では、こうした行動が発情によって見られることがあります。発情期の行動は性格の問題やわがままではなく、ホルモンの影響による自然な変化です。そのため、叱ったり無理にやめさせようとしたりしても、根本的な解決にはつながりません。
一方で、夜鳴きが続くと飼い主様も眠れなくなったり、愛猫自身も落ち着かない時間が増えたりして、お互いに負担が大きくなることがあります。
そこで今回は、猫の発情期でよく見られるサインや、夜鳴き・落ち着かない時に自宅でできる対処法、避妊手術を相談するタイミングについて解説します。

■目次
猫の発情期には、普段とは違う行動がいくつか見られます。特にメス猫では、犬のようにはっきりとした出血がほとんど見られないため、行動の変化で気づくケースが多いです。
発情期に見られやすいサインには、次のようなものがあります。
・夜に大きな声で鳴く
・落ち着きなく歩き回る
・体を床や家具、人にこすりつける
・いつもより甘え方が強くなる
・お尻を上げる姿勢をとる
・しっぽを横にずらすような姿勢を見せる
・トイレ以外の場所でおしっこをする
・スプレー行動のようなおしっこが見られる
こうした行動は、猫にとっては自然な繁殖本能によるものとはいえ、飼い主様が寝不足になってしまったり、ご近所との騒音トラブルの原因になってしまったりと、日常生活への負担は決して小さくありません。
猫の発情は、一般的に生後6〜10か月ごろから始まることが多いとされています。
ただし、すべての猫が同じ時期に発情するわけではなく、体格や生活環境、日照時間などによって前後することがあります。
猫は、日照時間が長くなる春から初夏にかけて発情しやすい動物といわれています。
一方で、完全室内飼育の猫では、室内照明によって明るい時間が長く保たれるため、季節に関係なく発情が見られることもあります。
1回の発情期は、目安として7〜10日ほど続くことが多いです。
ただし、交尾が行われなかった場合は、しばらくして再び発情が起こることがあります。
発情期の行動を完全に止めることは難しいですが、環境を整えることで、猫が少しでも落ち着いて過ごしやすくなる場合があります。
大切なのは「無理にやめさせる」のではなく「刺激を減らして、悪化させない」ことです。
① 静かな環境を整える
テレビの音や人の出入りが多い環境は、発情中の猫をより過敏にしてしまうことがあります。音量を下げる、来客が多い時間帯は別の部屋で過ごしてもらうなど、なるべく刺激を減らし、落ち着ける場所を用意してあげましょう。
② 遮光・防音で夜の刺激を減らす
夜間の光や物音は、猫の興奮を強めてしまうことがあります。遮光カーテンで部屋を暗く保つ、窓際から寝場所を離す、寝室から少し距離のある部屋で休ませるなど、環境面でできる工夫を試してみてください。
③ スキンシップで安心感を与える
過剰に甘えてくるときには、無理のない範囲で抱っこしたり、優しく撫でたりしてあげることで、多少気持ちが落ち着くことがあります。
ただし、逆にイライラして触られるのを嫌がる子もいるため、その子の性格やそのときの様子に合わせた距離感を大切にしましょう。
④ フェロモン製品の活用
猫用フェロモン製品を使うことで、不安や興奮を和らげるサポートが期待できます。コンセントに挿すディフューザータイプやスプレータイプもあります。
ただし、この対処法は発情そのものを止めるものではないため、あくまで環境づくりの補助として考えるとよいでしょう。
発情期の夜鳴きが続くと、飼い主様も眠れず、つらくなってしまうことがあります。しかし、焦って自己流の対応をすると、愛猫に強いストレスを与えたり、体を傷つけたりするおそれがあります。
避けたい対応は、以下のようなものです。
❌ 叱る・押さえつけるなどの“しつけ”で止めようとする
夜鳴きやそわそわした行動は、猫がわざと困らせようとしているわけではありません。ホルモンの変化によって起こる自然な行動です。
そのため、大きな声で叱る、ケージに長時間閉じ込める、体を無理に押さえつけるといった方法では、根本的な解決にはつながりません。
むしろ、不安やストレスが強くなり、飼い主様との信頼関係に影響することもあります。
❌ 自己流の民間療法を試す
インターネット上には、発情期の猫を落ち着かせる方法として、さまざまな民間療法が紹介されています。しかし、なかには医学的な根拠がはっきりしないものや、猫の体に負担をかける可能性があるものもあります。
市販のサプリメントやホルモンに影響する可能性のある製品を、獣医師に相談せずに使用することもおすすめできません。
❌ 「綿棒刺激法」などの方法
特に注意が必要なのが、いわゆる「綿棒刺激法」です。これは、人為的に交尾を模した刺激を与えることで、発情を一時的に落ち着かせようとする方法です。
一時的に発情が落ち着いたように見えることがあるかもしれませんが、子宮や膣を傷つけたり、細菌感染を引き起こしたりするリスクがあります。また、根本的な解決にはならず、猫の健康を損なう可能性があります。
発情期の行動がつらいときほど、自己流で対処せず、猫の体に負担をかけない方法を選ぶことが大切です。
特に、以下のような場合は無理に様子を見続けず、早めに動物病院へ相談しましょう。
・夜鳴きや落ち着きのなさが強く、生活に大きく影響している
・発情のような行動が何度何度も繰り返される
・トイレの失敗や排尿の異常がある
・食欲や元気が落ちている
・発情なのか病気なのか判断がつかない
診察では、いつからどのような行動が見られるのか、食欲や排尿の様子に変化があるか、生活環境に変化があったかなどを確認します。
「発情だと思うけれど、本当にそうなのか不安」という段階で相談しても問題ありません。早めに確認することで、病気の見落としを防ぎ、避妊手術を含めた今後の対応も考えやすくなります。
避妊手術は、生後6か月ごろ、初めての発情が来る前に行うのが理想的とされています。ただ、実際の診療現場では「すでに発情が始まってから相談に来られる」ケースも少なくありません。
こうした場合に注意が必要なのが、猫の発情サイクルの特徴です。
猫は発情の周期が短く、一度おさまっても短期間で再発することが多いため「完全に落ち着いてから手術をしよう」と待っていると、適切なタイミングを逃してしまうこともあります。
そのため、発情中であっても、体調や年齢、発情の状態をしっかりと確認しながら、安全に配慮したうえで手術を行うケースもあります(発情期は出血しやすくなるため、通常より慎重な管理が必要です)。
つまり、必ずしも「発情が終わるまで待たなければならない」というわけではなく、個々の状況に応じて判断します。
発情期のストレスや将来的な病気の予防を考えるうえで、避妊手術は最も確実で安全な方法です。
主なメリットは、以下の通りです。
・発情に伴う夜鳴きや落ち着きのなさがほぼ見られなくなる
・望まない妊娠を防ぐことができる
・子宮蓄膿症や卵巣疾患の予防
・乳腺腫瘍の発生リスクの軽減(初回発情前の手術でより効果的)
▶︎子宮蓄膿症についてはこちらで解説しています
▶︎乳腺腫瘍についてはこちらで解説しています
猫の発情期は、猫自身にとっても、飼い主様にとっても大きな負担となる時期です。夜鳴きや落ち着きのなさは「性格の問題」ではなく、体の仕組みによる自然な反応であることをまず理解してあげることが大切です。
一時的な対処で乗り切ることは可能ですが、発情が繰り返されるたびにストレスは積み重なっていきます。そのため、将来の健康や生活の質を考えると、避妊手術を前向きに検討することが、猫にとっても飼い主様にとっても安心につながります。
当院では、発情期のお悩み相談から、避妊手術の時期や不安点のご説明まで、丁寧にご説明しています。「今すぐ手術するべきか迷っている」「まずは話だけ聞いてみたい」という段階でも構いません。どうぞお気軽にご相談ください。
避妊手術についての詳しい情報は、以下のページでもご覧いただけます。
https://www.hikarigaoka.net/service/fix/
https://www.hikarigaoka.net/cat-hinin/
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最終更新:2026年5月