「夜になると大きな声で鳴いて眠れない」「急に甘えてきて、落ち着きがなくなった」そんな愛猫の変化に戸惑ったことはありませんか? それは、猫の「発情期」による行動かもしれません。
猫の発情期には、これまでとはまったく違う行動が見られることがあり、初めて経験する飼い主様にとっては驚きやストレスを感じる場面も少なくありません。特に避妊手術をしていないメス猫では、月齢や季節の影響を受けて発情が繰り返され、生活に支障が出ることもあります。
さらに、メス猫の発情期は犬のような出血がほとんど見られないため「気づいたときには行動が激しくなっていた」というケースも多く、気付きにくいという特徴があります。
今回は、猫の発情期に見られる代表的な行動やその理由をご紹介しながら、ご家庭でできる対処法や、避妊手術を受けるうえでの適切な時期についても詳しく解説します。

■目次
猫の発情期は、性成熟を迎える生後6〜10ヶ月ごろから始まります。特にメス猫は、日照時間が長くなる春〜初夏にかけて発情しやすく、季節性のある動物といわれています。ただし、完全室内飼育で人工照明により明るい時間が長く保たれる環境では、季節に関係なく年に何度も発情が起きることがあります。
1回の発情期は、平均で7〜10日程度続きます。しかし、交尾が行われなかった場合、数週間後に再び発情が起こることもあります。つまり、繁殖の機会が得られない限り、周期的に発情が繰り返されてしまうのです。
このため、繁殖を希望していない場合には、日常生活への影響や将来の病気のリスクも踏まえ、早い段階で避妊手術を含めた対応を検討することが大切です。
発情中の猫には、普段とまったく異なる行動が現れることがあります。代表的なのは次のようなものです。
・落ち着きがなく、そわそわして家中をうろつく
・飼い主様への甘え方が強くなる(体をこすりつける、まとわりつく)
・尻尾を持ち上げ、腰を低く構えるような独特のポーズをとる
・トイレ以外の場所でスプレー(マーキング)を行うことがある
・昼夜を問わず、強く長く鳴く(夜鳴きが特に目立つ)
こうした行動は、猫にとっては自然な繁殖本能によるものとはいえ、飼い主様が寝不足になってしまったり、ご近所との騒音トラブルの原因になってしまったりと、日常生活への負担は決して小さくありません。
「まだ避妊手術の予定が立っていない」「手術の時期を相談中」など、すぐに避妊手術が難しい場合もあります。そのようなときは、以下のような工夫で少しでも猫の落ち着きを保つようにしてみましょう。
① 静かな環境を整える
テレビの音や人の出入りが多い環境は、発情中の猫をより過敏にしてしまうことがあります。音量を下げる、来客が多い時間帯は別の部屋で過ごしてもらうなど、なるべく刺激を減らし、落ち着ける場所を用意してあげましょう。
② 遮光・防音で夜の刺激を減らす
夜間の光や物音は、猫の興奮を強めてしまうことがあります。遮光カーテンで部屋を暗く保つ、窓際から寝場所を離す、寝室から少し距離のある部屋で休ませるなど、環境面でできる工夫を試してみてください。
③ スキンシップで安心感を与える
過剰に甘えてくるときには、無理のない範囲で抱っこしたり、優しく撫でたりしてあげることで、多少気持ちが落ち着くことがあります。ただし、逆にイライラして触られるのを嫌がる子もいるため、その子の性格やそのときの様子に合わせた距離感を大切にしましょう。
④ フェロモン製品の活用
猫用フェロモン製品を使うことで、不安や興奮を和らげるサポートが期待できます。コンセントに挿すディフューザータイプやスプレータイプもあります。
発情期の行動があまりにつらく、「何とか止めたい」と思うあまり、誤った方法を試してしまう飼い主様も少なくありません。しかし、自己判断による対処は、猫の体や心に大きな負担をかけてしまう可能性があります。
❌ 叱る・押さえつけるなどの“しつけ”で止めようとする
夜鳴きやそわそわした行動は、猫自身の意思というより、本能的なホルモンの変化によって起こる行動です。
そのため、
・大きな声で叱る
・ケージに閉じ込める
・体を押さえつける
といった方法で「やめさせよう」としても改善せず、かえって不安やストレスを増やし、飼い主様との信頼関係を損なう原因にもなります。
❌ 「綿棒刺激法」などの方法
特に注意していただきたいのが、いわゆる「綿棒刺激法」です。これは人為的に交尾を模した刺激を与えることで発情を一時的に落ち着かせようとする方法ですが、
・子宮や膣を傷つける
・細菌感染を引き起こす
・子宮の病気のリスクを高める
などの危険性があり、決しておすすめできません。発情が抑えられたように見えても、根本的な解決にはならず、猫の健康を損なうリスクの方が大きいと考えられています。
また、市販のサプリメントやインターネット上の民間療法を、獣医師に相談せずに使用することもおすすめできません。ホルモンバランスに影響を与える可能性があり、体調を崩す原因になることがあります。
発情期の行動は、「しつけ」や「我慢」でコントロールできるものではなく、身体の仕組みによる自然な反応です。
困ったときほど自己流で対処せず、どうぞ早めにご相談ください。
発情期のストレスや将来的な病気の予防を考えるうえで、避妊手術は最も確実で安全な方法です。
避妊手術を行うことで、
・発情に伴う夜鳴きや落ち着きのなさがほぼ見られなくなる
・望まない妊娠を防ぐことができる
・子宮蓄膿症や卵巣疾患の予防
・乳腺腫瘍の発生リスクの軽減(初回発情前の手術でより効果的)
といった多くのメリットがあります。
▼子宮蓄膿症についてはこちらで解説しています
▼乳腺腫瘍についてはこちらで解説しています
避妊手術は、生後6か月ごろ、初めての発情が来る前に行うのが理想的とされています。ただ、実際の診療現場では「すでに発情が始まってから相談に来られる」ケースも珍しくありません。
こうした場合に注意が必要なのが、猫の発情サイクルの特徴です。
猫は発情の周期が短く、一度おさまっても短期間で再発することが多いため「完全に落ち着いてから手術をしよう」と待っていると、適切なタイミングを逃してしまうこともあります。
そのため、発情中であっても、体調や年齢、発情の状態をしっかりと確認しながら、安全に配慮したうえで手術を行うケースもあります(発情期は出血しやすくなるため、通常より慎重な管理が必要です)。
つまり、必ずしも「発情が終わるまで待たなければならない」というわけではなく、個々の状況に応じて判断します。
手術後は、数日〜1週間程度の安静が必要になります。傷口を舐めないようにエリザベスカラーを装着し、食欲・元気・排泄の様子をよく観察してあげましょう。不安な点があれば、いつでもご連絡ください。
猫の発情期は、猫自身にとっても、飼い主様にとっても大きな負担となる時期です。夜鳴きや落ち着きのなさは「性格の問題」ではなく、体の仕組みによる自然な反応であることをまず理解してあげることが大切です。
一時的な対処で乗り切ることは可能ですが、発情が繰り返されるたびにストレスは積み重なっていきます。そのため、将来の健康や生活の質を考えると、避妊手術を前向きに検討することが、猫にとっても飼い主様にとっても安心につながります。
当院では、発情期のお悩み相談から、避妊手術の時期や不安点のご説明まで、丁寧にご説明しています。「今すぐ手術するべきか迷っている」「まずは話だけ聞いてみたい」という段階でも構いません。どうぞお気軽にご相談ください。
避妊手術についての詳しい情報は、以下のページでもご覧いただけます。
https://www.hikarigaoka.net/service/fix/
https://www.hikarigaoka.net/cat-hinin/
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