猫に避妊手術を行うメリットはいくつかありますが、そのひとつが「発情行動が起こらなくなること」です。猫の発情は犬と比べてもとても活発で、大きな声で鳴き続けたり、そわそわして落ち着かなくなったりと、飼い主様の日常生活に影響が出てしまうことも少なくありません。
そのため「できれば今日すぐにでも手術してほしい」とご相談に来られる飼い主様もいらっしゃいます。実際、多くの猫では避妊手術を受けることで、発情期特有の行動は見られなくなります。
一方で、まれではありますが「手術を受けたのに、また発情のような様子が見える」というケースもあります。せっかく手術をしたのにどうして…?と戸惑う方もいらっしゃるでしょう。確率としては非常に低いものの、ゼロではありません。
そこで今回は、避妊手術後にもかかわらず発情が見られる原因と、その対応法について詳しくご説明します。

■目次
結論からお伝えすると、避妊手術後にも発情行動が見られることはごくまれにあります。基本的には卵巣を摘出することで、発情ホルモンの分泌がなくなり、発情行動はなくなります。
しかし、何らかの理由で卵巣の一部が残っていたり、副卵巣と呼ばれる組織がホルモンを分泌していたりすると、体が「避妊されていない」と認識し、再び発情期と同じような行動が見られることがあります。
猫の発情行動には次のような特徴があります。
・夜中に大きな声で鳴く
・床に体をこすりつけるような動き
・飼い主様に甘えて落ち着かない様子
・食欲の変化やトイレの失敗などの行動変化
これらが数日〜1週間ほど続く場合、発情の可能性があります。
ただし、こうした行動は、環境の変化によるストレス反応や分離不安などでも見られることがあります。
避妊後すぐの時期や引っ越し・生活環境の変化があった場合は、発情ではなく“行動の変化”の可能性も考えられます。
実際にホルモンの影響で発情行動が見られるケースとして、以下のような原因が考えられます。
通常、避妊手術では両方の卵巣をしっかり摘出しますが、まれに一部の卵巣組織が体内に残ってしまうことがあります。この組織が女性ホルモン(エストロゲン)を分泌し続けることで、再び発情行動が出ることがあります。
猫の卵巣は犬に比べて分離しやすく、通常であれば取り残しが起こる可能性は非常に低いです。ただし、次のようなケースでは注意が必要です。
・猫が肥満気味で、視野が確保しづらかった
・卵巣とつながる靭帯が非常に強く太かった
・卵巣周囲の組織が増殖して分かりづらかった
このような状況が重なると、微量の組織が残る可能性もゼロとは言い切れません。
ごく一部の猫には、本来の卵巣とは別に、卵巣のようなホルモン分泌機能をもつ「副卵巣」が存在することがあります。
副卵巣はすべての猫にあるわけではなく、決まった場所に存在するものでもありません。そのため、通常の避妊手術中に目視で確認することは非常に困難です。
この副卵巣が活性化すると、避妊手術後であっても発情行動が起こる原因となることがあります。
非常にまれなケースとして、生後1〜2ヶ月といった極端に早い時期に避妊手術を行った場合、体がホルモンの分泌機能を補おうとして、卵巣とは無関係な場所に卵巣様の細胞を形成してしまうことがあります。
これが原因で、ホルモンがわずかに分泌され、発情に近い行動が見られることもあります。ただし、このような早期の手術は一般的ではなく、この現象も「知識として知っておきたい、ごくまれなケース」として理解しておくとよいでしょう。
▼猫の避妊手術の適した時期についてはこちらで解説しています
「手術がちゃんとできていなかったのでは?」と心配される方もいるかもしれません。しかし、避妊手術後に発情のような行動が見られても、すぐに手術の失敗とは言い切れません。
猫の体には個体差があり、ホルモンの影響がしばらく残る場合もあります。また、前述した副卵巣などのように、手術では見つけられない位置に組織があったという可能性もあります。
重要なのは、正しく原因を特定し、必要な対応を取ることです。
避妊手術後しばらく経ってから発情のような行動が出た場合、まずは動物病院を受診し、症状を詳しくお伝えください。
動物病院では以下のような検査を行います。
・問診・身体検査
「いつから」「どのような行動が見られたか」「環境の変化はあったか」などの情報が重要な手がかりになります。
・ホルモン検査・超音波検査
血液検査でホルモン値を測定したり、超音波検査で卵巣残存がないかを確認したりします。
避妊手術後に発情のような行動が見られ、原因として卵巣組織の残存や副卵巣の存在が疑われる場合、対応策としては、原因となっている組織を再手術で摘出する以外に方法はありません。
この再手術によって、実際に症状が改善するケースは多くあります。ただし、残された組織が容易に見つかることもあれば、非常に小さく、場所も不明確で発見が難しいこともあります。そのため、再手術の実施時期や手法については、愛猫の体調や年齢、発情行動の頻度などをふまえ、慎重に判断する必要があります。
避妊手術後に見られる発情のような行動は、ホルモンの影響による本当の「発情」から、環境やストレスによる一時的な変化まで、さまざまな原因が考えられます。
まずは「今どんな行動が見られるのか」を記録し、できるだけ早くかかりつけの動物病院に相談してください。
「手術したのに…」と落ち込まず、一度ゆっくり状況を整理しながら、冷静に対処していきましょう。
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最終更新:2026年2月