「最近、寝ている時間が増えた気がする」
「ごはんの量が減ってきた」
「なんとなく動きがゆっくりになった」
猫のこのような変化は、年齢や気分の問題と思われることもあります。しかし、なかには貧血が関係しているケースもあります。
猫は体調不良を隠しやすい動物です。そのため、貧血があっても初期の段階ではわかりやすい症状が出ないことがあります。
貧血は、単に「血が足りない状態」というだけでなく、体の中で起きている病気のサインとして見つかることもあります。
今回は、猫の貧血で見られるサインや自宅で確認できるポイント、早めに受診したい目安について解説します。

■目次
貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンが減り、全身に酸素を運びにくくなる状態です。
赤血球は、体のすみずみまで酸素を届ける役割をしています。酸素が十分に届かなくなると、体が疲れやすくなり、元気がない、食欲が落ちる、呼吸が速いといった変化が出ることがあります。
人が貧血を起こすと、立ちくらみやめまいとして自覚することがあります。しかし、猫は「ふらつく」「倒れる」といった分かりやすい症状を、初期の段階では見せないことも少なくありません。
多くの場合、寝ている時間が増える、動きたがらない、隠れて出てこないなど、日常の小さな変化として現れます。
また、貧血はそれ自体が単独の病気というより、出血、感染症、慢性腎臓病などの内臓の病気、免疫の異常、腫瘍など、背景にある病気によって起こることがあります。
そのため「貧血かどうか」だけでなく「なぜ貧血が起きているのか」を調べることが大切です。
貧血が心配なときは、まず普段との違いを確認してみましょう。自宅では、次のようなポイントが手がかりになります。
・粘膜の色
健康な猫の歯茎は、一般的に薄いピンク色が目安です。歯茎や舌、まぶたの裏側が白っぽい、血の気がないように見える場合は注意が必要です。
ただし、照明の色や猫の緊張、もともとの色味によって見え方は変わります。色だけで貧血と決めつけず、食欲や元気、呼吸の様子もあわせて確認しましょう。
なお、口の中を確認するときは、無理に開けたり、嫌がる猫を押さえつけたりする必要はありません。見える範囲で確認し、難しければ写真や動画を撮っておくと診察時に役立ちます。
・食欲の変化
「食べたか、食べていないか」だけでなく「普段の何割くらい食べているか」を意識してみましょう。
「いつもの半分くらいしか食べない」「大好きなおやつも残す」という場合は、体に何らかの負担がかかっているサインかもしれません。
・元気や動き方
寝ている時間、動き方、高い場所に登るか、呼びかけへの反応なども大切な観察ポイントです。
いつもより動きがゆっくりしている、隠れて出てこない、ジャンプしなくなったといった変化があれば、体調不良のサインとして見ておきましょう。
・安静時の呼吸
体の中の酸素が足りなくなると、猫は一生懸命に呼吸をして酸素を取り込もうとします。
猫が寝ているときや、おとなしく座っているときに、お腹や胸が大きく動いていないか、呼吸のテンポがいつもより速くないかを確認してください。
・尿や便の色
尿や便の色も大切な手がかりです。
赤血球が壊れて尿に色素が混ざると、赤い尿や濃い茶色の尿が出ることがあります。また、胃や腸などの消化管から出血している場合は、便が黒いタール状になることがあります。
猫の貧血は、急激に進行すると命に関わることがあります。
次のようなサインが見られる場合は、様子を見ず、できるだけ早く動物病院を受診してください。
・歯茎や舌が明らかに白い
・ぐったりしている
・立てない、ふらつく
・食欲がほとんどない状態が続いている
・安静時でも呼吸が速い、苦しそうにしている
・尿が赤い、茶色っぽい、濃い色をしている
・便が黒い、血が混じる
・お腹が張っている
・事故、落下、ケンカの後から様子がおかしい
・腎臓病、心臓病、腫瘍などの持病がある
特に、ぐったりしている、呼吸が速い、歯茎が白いといった変化がある場合は、貧血が進んでいる可能性があります。
猫の貧血は、原因によって治療へのアプローチが異なります。
獣医療では、主に次の3つの仕組みに分けて原因を探っていきます。
1. 出血による貧血
けがによる出血だけでなく、お腹の中の出血、腫瘍からの出血、胃や腸などの消化管からの出血が原因になることがあります。
目に見えない場所で出血している場合は「急に元気がなくなる」「便が黒くなる」といった症状で気づくことがあります。
2. 赤血球が壊される貧血
体の中にある赤血球が、何らかの理由で途中で壊されてしまう状態です。
自身の免疫が赤血球を攻撃してしまう病気、ネギ類の誤食による中毒、感染症などが原因になることがあります。
赤血球が大量に壊れると、皮膚や白目が黄色くなる黄疸や、濃い色の尿が見られることがあります。
▼誤飲誤食についてはこちらで解説しています
▼猫の黄疸についてはこちらで解説しています
3. 赤血球が作られにくくなる貧血
新しい赤血球を作る力が落ちてしまう状態です。
猫で特に注意したい原因のひとつに、慢性腎臓病があります。腎臓は、赤血球を作るように体へ指示を出すホルモンに関わっています。そのため、腎臓の働きが低下すると、赤血球が作られにくくなることがあります。
そのほか、猫白血病ウイルスなどの感染症、慢性的な炎症、栄養状態の悪化なども原因になる場合があります。
▼慢性腎臓病についてはこちらで解説しています
▼猫白血病ウイルス感染症についてはこちらで解説しています
このように、同じ貧血でも原因はさまざまです。見た目だけで判断せず、検査で状態を確認することが重要です。
貧血の原因はさまざまで、すべてを予防できるわけではありません。
それでも、感染症やけが、誤食など、日常生活の工夫でリスクを減らせるものもあります。
・完全室内飼育を心がける
外に出さないことで、他の猫とのケンカによる怪我や、貧血を引き起こすウイルス感染症、マダニからの感染リスクを大幅に減らせます。
・誤食を防ぐ
ネギ類が含まれる人の食べ物や、猫にとって危険な植物は、届かない場所に保管しましょう。
特にユリ科の植物は猫にとって危険なため、室内に置かないよう注意が必要です。
・定期的に健康診断を受ける
特にシニア期の猫では、血液検査や尿検査を定期的に受けることで、慢性腎臓病や軽度の貧血などを早い段階で見つけやすくなります。
動物病院では、まず診察で歯茎の色、脱水の有無、体温、心拍、呼吸、痛みの有無などを確認します。
そのうえで血液検査を行い、赤血球の数やヘモグロビン、炎症の有無、腎臓や肝臓の数値などを見ていきます。
血液検査では、貧血があるかどうかだけでなく、どの程度進んでいるか、急に起きたものか、慢性的に進んでいるものかを判断する手がかりになります。
必要に応じて、次のような検査を組み合わせます。
・尿検査
・便検査
・レントゲン検査
・超音波検査
・感染症の検査
感染症、免疫の異常、腫瘍、腎臓病などが疑われる場合は、さらに詳しい検査を検討することもあります。
「貧血があるか」だけではなく「なぜ貧血が起きているのか」を調べることが、その後の治療につながります。
猫は病院へ来ると、緊張や興奮から呼吸数が上がったり、お家での様子とは違った反応を見せたりすることがあります。
そのため、飼い主様が日頃から見ている「普段の様子」が、診察時の大切な手がかりになります。
受診の際には、次のような内容をメモしておくと診察がスムーズです。
・いつから元気や食欲が落ちたか
・食事量は普段の何割くらいか
・歯茎や舌の色がいつもと比べてどう違うか
・呼吸が速い、ぐったりしている、隠れるなどの様子があるか
・尿や便の色に変化があるか
・嘔吐、下痢、体重減少などがあるか
・落下、事故、ケンカ、誤食の可能性があるか
・飲んでいる薬や治療中の病気があるか
可能であれば、呼吸の様子や歩き方、尿や便の色などを写真や動画で残しておくと、診察時に役立つことがあります。
猫の貧血は、初期には分かりにくく、元気がない、食欲が落ちた、寝ている時間が増えたといった変化として現れることがあります。
貧血の背景には、出血、感染症、腎臓病、免疫の異常、腫瘍など、さまざまな原因が関係している場合があります。
歯茎や舌が白っぽい、ぐったりしている、呼吸が速い、食欲がほとんどないといった症状がある場合は、早めに受診しましょう。
「少し元気がないだけかも」と迷うときでも、飼い主様の気づきが早期発見につながることがあります。気になる変化がある場合は、動物病院へご相談ください。
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最終更新:2026年7月