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食後にふらつきや痙攣が見られたら要注意!│犬の門脈体循環シャントについて

2023.03.16
犬の病気

門脈体循環シャントは、門脈という消化管から肝臓に血液を送る血管と、全身を巡る静脈にシャント(短絡)ができる病気です。
消化の過程で出るアンモニアなどの有害物質は、通常は門脈を通って肝臓に入り解毒されますが、門脈体循環シャントの犬では有害物質の一部が全身を巡る血管に入るため、様々な障害が起こります。
犬では珍しくない病気で、命の危険もあるため、早期に発見して介入する必要があります。



原因|多くは先天性。好発犬種は要注意


犬の場合は先天性(生まれつき)がほとんどで、遺伝的な要因が強いと考えられています
よく見られる犬種は、ミニチュア・シュナウザーヨークシャー・テリアシーズーマルチーズトイプードルミニチュア・ダックスフントなどです。

シャントが生じる部位が肝臓内の場合と肝臓外の場合があり、前者は大型犬に、後者は小型犬に多い傾向にあります。

先天的な場合は1歳未満での発生がほとんどですが、高齢で発症する場合もあります。

ほかに、慢性肝炎や肝硬変、肝線維症など、重度の肝障害により門脈の高血圧状態が続いた場合、後天的な門脈体循環シャントが発生することもあります。

 

症状|肝性脳症による食後の痙攣やふらつき


特徴的な症状はアンモニアなどの有害物質による肝性脳症で、よだれふらつき一時的な盲目痙攣などの中枢神経症状が見られます。
こうした症状は、食べたものが消化され、アンモニアなどの毒素の血中濃度が急上昇する食後1〜2時間ほどで悪化する傾向にあります。

軽症の場合は、原因不明の嘔吐下痢などの消化器症状が起こります。
また、アンモニアや尿酸の血中濃度が上がるため、尿路結石ができやすくなります。

後天性の場合は、肝不全から黄疸や食欲不振などの症状を示します。

 

診断|超音波でも診断可能だが正確な診断には造影CT


血液検査とレントゲン検査、超音波検査、CT検査などを行います。
超音波検査では無麻酔でシャントの有無を確認できますが、正確な位置や本数を特定するには麻酔下での造影CT検査が必要です。

 

治療|内科療法で症状を緩和させるか外科手術で根治させるか


内科治療で症状を緩和させる方法と、外科手術でシャント血管を閉じる方法があります。

内科治療では有害物質の産生と吸収を抑制するための薬の投与や、消化の過程で出るアンモニアの量を減らすために低タンパク質の食事療法などを行います。
しかし、こうした治療で行えるのは症状の緩和とある程度の延命です。
先天性の場合は、シャントの生じた部分や本数によっては外科手術での根治が可能です
ただし、まれですが術後に発作が起こる可能性もあります。
後天的な場合は、肝臓で起きている病気を治療する必要があります

 

予防|定期検査で早期発見を


ほとんどが先天性のため、残念ながら予防はできません。
長く続くと肝機能が悪化しさらに重篤となるため、早期の介入が重要です。
定期的な健康診断で早期発見を心がけましょう。

 

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<参考文献>

Alexandros O Konstantinidis, Michail N Patsikas, Lysimachos G Papazoglou, Katerina K Adamama-Moraitou. Congenital Portosystemic Shunts in Dogs and Cats: Classification, Pathophysiology, Clinical Presentation and Diagnosis. Vet Sci. 2023 Feb 17;10(2):160.

C J Broome, V P Walsh, J A Braddock. Congenital portosystemic shunts in dogs and cats. N Z Vet J. 2004 Aug;52(4):154-62.

 
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