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避妊手術が予防に有効│犬の乳腺腫瘍について

2023.01.26
犬の病気

乳腺腫瘍はメスの犬で最も多く見られる腫瘍です。

特に避妊をしていない中高齢の犬に多く、半分は悪性腫瘍(いわゆる乳がん)で4%は炎症性乳癌という非常に悪性度の高いがんです。

乳腺腫瘍の発生は卵巣から分泌される性ホルモンに関係するため、避妊手術により予防できると考えられています。

特に初回発情前の避妊手術の予防効果が高く、これが早期の避妊手術をお勧めする理由です。

原因|性ホルモンが発病の要因に


犬の乳腺腫瘍は50%が良性で、50%は悪性です。

発生には卵巣から分泌される性ホルモンが関係しているため、避妊をしていないメスでは発生リスクが高まります

よく発生する年齢は10〜11歳で、4歳以下での発生はまれですが、5歳を超えたら注意が必要でしょう。

なお、ケースとしては非常に稀ですが、オスでも発生します。

 

症状|乳腺にしこり。炎症性乳癌では激しい皮膚の炎症も


乳腺腫瘍では、乳腺にしこりができます

多くの場合、痛みはありませんが、腫瘍が大きくなると表面から血や膿が出る、歩きにくいなどの症状が見られることもあります

外見から良性か悪性かを区別するのは難しく、悪性腫瘍には成長が速い、表面が崩れやすいなどの特徴があります

また最近の研究では、しこりの大きさが3cmを超えれば70%の確率で悪性であることがわかりました

ただし、これらの特徴がない悪性腫瘍もあるため、正確な診断のために外科的に摘出して組織検査にかける必要があります

なお、炎症性乳癌では激しい皮膚の炎症が起こります。

悪性の場合、まず近くのリンパ節に転移してから、肺や腹腔内の臓器などに転移します。

 

診断|診断と治療のために外科的に摘出する


乳腺にしこりを見つけた場合は、ほかにないか、リンパ節の腫れはないかなどを、注意深く観察します。

針を刺して細胞を観察する針生検も行いますが、この方法では腫瘍の種類をある程度までしか推測できません。

治療計画を立てるうえで、腫瘍の種類を明らかにすることは必須です。

このため、治療と診断の目的で外科的に腫瘍を切除して、組織検査を行います。

 

治療|外科的な摘出が基本


外科手術により腫瘍の摘出を行います

切除する範囲は、腫瘍の大きさや状態によって異なります。

未避妊の場合は、再発や子宮・卵巣の疾患を予防するために、避妊手術を同時に行う場合もありま

良性腫瘍であれば、完全に切除できれば予後は良好です

悪性腫瘍の場合、手術後に別の乳腺で再発することもあります

また、遠隔転移がある場合や摘出が難しい場合は、完治は期待できないものの放射線治療や抗がん剤治療を提案することもあります

炎症性乳癌は、現代の獣医療では治療は困難です。

 

予防|若いうちの避妊手術に予防効果がある


乳腺腫瘍は初回発情前の避妊手術で0.05%、2回目の発情前までの避妊手術で8%、2回目の発情以降では26%まで発生率を下げられることがわかっています

また、万が一発生したとしてもすぐに治療できるよう、普段から体を触って、もし乳腺にしこりが見つかったら、早めに受診しましょう。

■犬の乳腺腫瘍はこちらでも紹介しています

 

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<参考文献>

Lucinéia Costa Oliveira, Maria Eduarda dos Santos Lopes Fernandes , Anna Julia Rodrigues Peixoto, Felipe Farias Pereira da Camara Barros, Cássia Maria Molinaro Coelho, Vivian de Assunção Nogueira, Saulo Andrade Caldas. Clinical, epidemiological, and histopathological aspects of breast cancer in female dogs at Federal Rural University of Rio de Janeiro Veterinary Hospital. Braz J Vet Med. 2022 Sep 16;44:e000722.

阪口貴彦, 白地友子, 中野康弘, 大前省吾, 小澤信一, 南毅生. 犬の炎症性乳癌の挙動および予後に関する調査. 日獣会誌. 2001 ; 54 : 779-783.

 
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