急性腎障害とは、何らかの原因によって起こる急性の腎障害のことです。
腎臓は老廃物の排泄のほか、血圧の調節や造血ホルモンの分泌など、重要な働きをしています。急性腎障害ではこれらの機能が正常に働かなくなり、身体中にさまざまな不調をもたらします。
進行が早く、あっという間に亡くなってしまう猫も少なくありません。
早急に治療する必要がありますので、症状が見られた猫はすぐに受診しましょう。
急性腎障害はその原因がどこで起きているかによって腎前性、腎性、腎後性に分けられます。
・腎前性:腎臓に十分量の血液が入らないことが原因。脱水、出血、ショック、心臓病など。
・腎 性:腎臓の障害が原因。毒物(エチレングリコール、ユリ科植物など)や薬物(非ステロイド系抗炎症薬など)、感染症(レプトスピラなど)、腎炎、高体温、低体温、火傷など。
・腎後性:尿が出なくなることが原因。尿道結石や膀胱炎、前立腺肥大など。
※腎前性や腎後性の急性腎障害は慢性腎臓病の原因にもなる。
猫に多い尿道結石や膀胱炎では尿が出なくなることがありますが、対応が遅れると腎後性の急性腎障害が発生してしまうため、注意が必要です。
急激に元気の消失、食欲の低下が起こり、嘔吐や意識障害などを起こします。
尿量が減り、全く出なくなることもあります。
進行して尿毒症になると、けいれんや意識障害などを引き起こします。
急性腎障害は進行の早い病気です。
様子を見ていると手遅れになりかねません。早急に受診しましょう。
血液検査で高窒素血症(BUN、クレアチニンの上昇)を確認したうえで、急性腎障害の原因を調べます。
尿検査やレントゲン検査、超音波検査は、障害のある部位の特定に役立ちます。
急性腎障害は短期間で命に関わる怖い病気です。
基本的には入院での集中治療が必要で、原因治療を行いながら、輸液療法により脱水や電解質の補正、症状に対する対症療法を行い、経過を見ます。
腎後性などで尿が出ない場合は、尿道カテーテルを留置し、利尿剤などで排尿を促す治療を行うこともあります。
早急に適切に治療を行えば腎機能が回復することもありますが、腎機能が回復できなかった場合は慢性腎臓病に移行します。
このため、たとえ元気になったとしても経過を追っていく必要があります。
尿路結石や膀胱炎の予防は、急性腎障害の予防につながります。
なるべく水分を取らせ、適度に運動をさせ、ストレスを減らすなど、健康的な食生活を心がけましょう。
また、尿が出ない状態は急性腎障害の症状であるだけでなく、原因でもあるため、異常が見られたらすぐに受診しましょう。
■尿路結石症についてはこちらの記事でも解説しています
■膀胱炎についてはこちらの記事でも解説しています
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東京都練馬区に本院を置き、東京都内、埼玉県で4つの動物病院を運営しています
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<参考文献>
原田佳代子. 5.急性腎障害. In: 犬と猫の腎臓病診療ハンドブック. 上地正実 監修. 2021 : pp.90-103. 緑書房.
International Renal Interest Society (IRIS). IRIS Kidney (iris-kidney.com)