夏の暑さ対策として「エアコンをつければ大丈夫」と思っていませんか?
しかし実際には、犬や猫にとっての快適な室温や湿度は人間の感覚とは大きく異なります。
犬や猫は全身が被毛に覆われており、汗腺も肉球の一部など限られた場所にしかありません。そのため熱が体にこもりやすく、体温調節がとても苦手です。たとえ室内であっても、熱中症を起こすリスクがあります。
また、フローリングの熱がこもりやすい場所や、風通しの悪い寝床など、家の中には思わぬ“暑さの落とし穴”も潜んでいます。
そこで今回は、愛犬・愛猫のために夏の室内環境をどのように整えるべきかを、わかりやすくご紹介します。
■目次
まずは、愛犬・愛猫が心地よく過ごせる温度と湿度の目安を知ることが大切です。
◆ 室温:25〜28℃前後
犬や猫は人よりも暑さに敏感です。人が快適に感じる28〜30℃では、愛犬愛猫には暑すぎることもあります。
特に、パグやフレンチブルドッグなどの短頭種は、呼吸による体温調節が苦手で、体に熱がこもりやすいため、25℃前後を目安に調整するのが理想です。
◆ 湿度:40〜60%
湿度も快適な環境づくりには欠かせません。60%を超えると蒸れによる皮膚トラブルやカビが発生しやすくなり、逆に30%を下回ると乾燥による脱水や皮膚バリアの低下につながる可能性があります。
温湿度計を設置し、室内の温度と湿度を数値で確認できるようにしましょう。目に見える形で把握することが、快適な環境づくりに役立ちます。
犬や猫が快適に過ごすためには、エアコンを「つけているだけ」では不十分です。温度や風向きなど、細かな配慮が必要です。
◆ 冷風が直接あたらないように
エアコンの風が犬や猫の体に直接あたると、体温が下がりすぎて体調を崩すおそれがあります。
風向きは上向きに設定し、サーキュレーターなどで室内全体に風を循環させるのがおすすめです。
◆ 節電モードは注意が必要
節電モードは便利な機能ですが、設定温度が高めになることが多く、人には快適でも犬や猫には暑すぎる場合があります。
室内の温度が適切に保たれているか、こまめに確認するようにしましょう。
◆ 部屋の温度ムラにも配慮を
同じ室内でも、日当たりや換気状況、階数によって温度に差が生じることがあります。愛犬愛猫が普段いる場所がエアコンの効きにくい場所でないか、温湿度計を置いて確認してみてください。
外出時、「短時間だから大丈夫」と思ってエアコンを切って出かけていませんか?
真夏の室内は、わずか30分でも高温になり、犬や猫が熱中症になるリスクが高まります。
〈安全にお留守番させるためのポイント〉
◆ エアコンはつけっぱなしが基本
途中で切れてしまうと危険なため、自動運転やタイマー機能には頼らず、安定した稼働を優先しましょう。
◆ 停電などの万が一に備えて
遮熱カーテンやすだれで直射日光を防ぎ、冷感マットやひんやり素材のベッドなどを用意すると安心です。
◆ スマート家電の設定は要確認
スマホでの遠隔操作は便利ですが、誤作動や通信エラーがあると空調が止まるリスクがあります。外出前には必ず、実際に設定が正しく動作するか確認しましょう。
▼犬と猫の熱中症についてはこちらで解説しています
夏を快適に過ごすためには、「温度の調整」だけでなく、犬や猫がリラックスできる“居場所”をつくることも大切です。
〈犬の場合〉
・フローリングは熱がこもりやすいため、通気性の良いマットや冷感素材のベッドを使い、体への熱の影響をやわらげましょう。
・ケージやクレートの中が風通しの悪い空間にならないよう、配置や覆い方を見直すのもポイントです。
〈猫の場合〉
・高い場所を好む猫には、棚の上やキャットタワーなど、風が抜ける高さのある場所に寝床を用意してあげましょう。
・段ボールや冷たい床など、ひとりでこもれるひんやりしたスペースがあると安心して過ごせます。
冷房の効率を高める工夫を取り入れることで、エアコンに頼りすぎず、快適な室内環境を保つことができます。
・遮熱カーテンやすだれを使って、窓からの直射日光をカット
・サーキュレーターで空気を循環させ、室内の温度ムラを防止
・夜間や早朝など気温が低い時間帯に換気して、自然な冷気を取り入れる
これらの工夫を組み合わせることで、エアコンの設定温度を下げすぎずとも、愛犬愛猫にとって心地よい環境を保つことが可能です。電気代の節約や環境への配慮にもつながるため、ぜひできることから取り入れてみてください。
犬や猫が夏を快適に過ごすには、住まいの構造や環境に合わせた対策が必要です。集合住宅と一戸建てでは室内環境の傾向が異なるため、それぞれに合った工夫を取り入れましょう。
〈集合住宅の注意点〉
集合住宅は気密性が高く、空気がこもりやすいという特徴があります。そのため、湿度や熱が溜まりやすくなります。
・窓を定期的に開けて換気を行う
・サーキュレーターや換気扇を活用して風の通り道を確保
・除湿器や除湿剤を使って、湿気による不快感や皮膚トラブルを予防する
〈一戸建ての注意点〉
一戸建ては階によって温度差が出やすく、特に2階は熱がこもりがちです。エアコンの効きにもムラが出やすいため、居場所に合わせた温度管理が重要です。
・愛犬愛猫が過ごすフロアの室温を優先して調整する
・2階で過ごす場合は、遮熱カーテンや断熱シートなどで熱を遮る工夫を
・留守番時は、過ごす部屋を限定して快適な環境をキープ
「エアコンをつけているから安心」そう思っていても、犬や猫にとっては暑すぎたり、湿度が不快だったりすることがあります。
人とは体のつくりや暑さの感じ方が異なる犬や猫にとって、「人にとって快適な環境」がそのまま当てはまるとは限りません。
温度や湿度だけでなく、風通しや寝床の位置、遮熱対策など、さまざまな視点から住環境を整えることで、夏場も安心して心地よく過ごせるようになります。
室内環境の整え方や体調面で気になることがあれば、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
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