血便とは、胃や腸、または肛門からの出血によって便に血が混ざる状態を指します。
便に混ざる血の状態には、真っ赤なものから黒っぽいもの、粘液が混ざっているものまでさまざまな種類があり、それぞれ異なる原因が考えられます。
便の状態は、犬や猫の健康状態を示す重要なサインです。普段からよく観察し、少しでも異常を感じたらお早めにご来院ください。
今回は、犬や猫の血便について、その原因と対策、そして動物病院で行われる検査について詳しく解説します。
■目次
1.血便の種類|鮮血便と黒色便(タール便)のちがい
2.犬や猫の血便の一般的な原因
3.血便に気づいたらすべき対応
4.診断と治療|どのような検査が行われるのか
5.血便の予防と再発防止のために
6.まとめ|早期発見と早期対応の重要性
血便に含まれる血液は、出血した場所によって色が異なります。
基本的に、出血が肛門に近いほど鮮やかな赤色の「鮮血便」となり、消化管の奥で出血した場合は、消化液の影響で黒く変色した「黒色便(タール便)」が見られることが多いです。
鮮血便には粘液が混ざることもあり、これは大腸の粘膜が剥がれて出血したことが原因と考えられます。
また、大腸に重度の炎症が起きている場合、便の周りにイチゴジャムのような赤くドロッとした血便が見られることもあります。
・胃腸炎
フードの変更やストレス、ウイルス感染などが原因で起こる胃腸炎では、胃や腸の粘膜が損傷し、血便が出ることがあります。
犬や猫は、胃腸炎によって新鮮な赤い血が混ざる血便が見られることが多い傾向にあります。
下痢、嘔吐、食欲不振を伴うこともあります。
・異物誤飲
尖ったものや紐状のものなど、飲み込んでしまった異物が消化管を傷つけることで血便が見られる場合があります。
これに加え、下痢、嘔吐、食欲不振が見られることもあります。
・炎症性腸疾患
慢性的な消化器症状により腸の壁がダメージを受け、出血することがあります。長期間にわたる下痢を繰り返すのが特徴です。
・食物アレルギー
特定の食べ物に対するアレルギー反応が原因で、消化管粘膜に炎症が起こり出血を引き起こすことがあります。下痢や嘔吐を伴うことも多く見られます。
・便秘
便秘により硬くなった便が大腸の壁や肛門を傷つけることで、新鮮な赤い血が混ざる血便が出ることがあります。
慢性の便秘は巨大結腸症の原因にもなり、さらに便秘を悪化させることがあります。
便秘についてはこちらで解説しています
巨大結腸症についてはこちらで解説しています
・腫瘍
腺癌やリンパ腫など、消化管内の腫瘍が原因で血便が見られる場合があります。また、白血病など血が止まりにくくなる病気では、黒いタール状の便が多量に見られることもあります。
血便以外にも、腫瘍によっては下痢や嘔吐などの消化器症状や、お腹に触った際にしこりが感じられることがあります。
・細菌感染
カンピロバクターやサルモネラなどの細菌による感染性腸炎では、悪臭のする下痢便や嘔吐が見られ、血便が出ることがあります。
・ウイルス感染
ウイルスが原因で血便が見られることもあります。
特に猫パルボウイルスが引き起こす猫汎白血球減少症では、感染により発熱や下痢が見られますが、このウイルスはワクチン接種で予防が可能です。
猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)についてはこちらで解説しています
・寄生虫
寄生虫が腸粘膜を傷つけることで血便が見られることがあります。
・その他の原因
免疫介在性血小板減少症など、血が止まりにくくなる病気や、薬の副作用、会陰ヘルニアや肛門嚢炎なども血便の原因になることがあります。
免疫介在性血小板減少症についてはこちらで解説しています
会陰ヘルニアについてはこちらで解説しています
肛門嚢炎についてはこちらで解説しています
血便を引き起こす原因は多岐にわたり、それぞれで必要な対応が異なります。
また、動物は病気の症状を隠しがちで、なかには急激に進行して命に関わる場合もあります。
そのため、愛犬や愛猫に血便が見られた際は、なるべく早めに獣医師にご相談いただくことをおすすめします。
まず、血便について獣医師に相談または受診する前に、便の状態をよく観察しましょう。
便の形状や色、粘液の有無などは診察の手がかりとなるため、獣医師に正確に伝えるようにしましょう。また、受診の際には可能であれば便を持参すると、さらに詳しい診断の助けになります。
さらに、行動の変化がないか、数日以内にストレスがかかる出来事(騒音、環境の変化、来客など)やフードの変更がなかったかも確認しておき、獣医師にお伝えください。
まず問診を通じて、食生活や環境に変化がなかったか、異物を誤飲していないかなどを確認した上で、身体検査を行います。
原因を特定するために行われる検査には、以下のようなものがあります。
・糞便検査:持参された便や院内で採取した便を用いて、便の性状、寄生虫またはその卵、腸炎を引き起こす細菌の有無などを調べます。
・血液検査:全身の臓器に異常がないかを確認するために行います。
・X線検査:体内の臓器や骨格の形状を確認するために行います。腫瘍が確認されることもあります。
・超音波検査:臓器の内部を詳細に確認し、異物やポリープなどの有無を調べます。
なお、犬や猫の状態によっては、初診で必ずしも全ての検査を行うわけではありません。例えば、急性胃腸炎が疑われる場合には、まず治療を開始して症状の経過を観察しつつ、必要に応じて追加検査を行うこともあります。
検査の結果、原因が特定できた場合はその原因に応じた治療を行います。
腫瘍や異物誤飲などで外科手術が必要なケースもありますが、内科的治療のみで改善することも少なくありません。
血便の予防には、日頃からの適切な食事管理が大切です。
便の状態は食事内容によっても左右されるため、フードを変える際には少しずつ新しいフードを混ぜて移行することで、胃腸への負担を軽減できます。
また、感染症が原因で血便が見られることもあるため、定期的な予防接種や駆虫薬の投与も欠かせません。
もし血便がストレスによるものであれば、ストレスの原因から離してあげる工夫も有効です。騒音を避けられるような環境を整えたり、落ち着ける場所を用意することで、再発防止につながることもあります。
さらに、血便が進行した病気のサインである場合も考えられますので、若いうちからの定期的な健康診断をおすすめします。定期的な検査で早期発見や予防につながり、健康な生活をしっかりサポートできるでしょう。
便は、体調を知らせてくれる大切な「お便り」です。
毎日の排便時にはよく観察し、もし血便が見られた場合はできるだけ早めに動物病院にご相談ください。
早期の発見と対応が、愛犬や愛猫の健康を守る第一歩となります。
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