心膜横隔膜ヘルニアは犬や猫の先天性心疾患です。
動物の胴体は、通常、横隔膜で心臓や肺を収める「胸腔」と、肝臓や胃腸などを収める「腹腔」に区切られています。
しかし心膜横隔膜ヘルニアでは、横隔膜に開いた穴が心臓を包む心膜とつながり、本来腹腔にある臓器が心臓を圧迫します。
心臓が正常に動けないため、手術をしないと長く生きられない犬猫もいます。
手術は、横隔膜の穴を塞ぐ横隔膜整復術を行います。
目次
1.原因|先天性の奇形
2.症状|元気がなく、下痢や呼吸器症状が出ることもあるが、無症状も多い
3.診断|レントゲン検査で診断できる
4.治療|完治には手術が必要
5.予防|若くて元気なうちの治療が重要! 健康診断で早期発見を
心膜横隔膜ヘルニアは先天性(生まれつき)の病気です。
通常、横隔膜と心膜は、母親のお腹のなかで赤ちゃんのからだが作られる段階で完全に閉じますが、何らかの理由でこれが閉じずに横隔膜と心膜がつながってしまうと、心膜横隔膜ヘルニアになります。
犬よりも猫に多く見られ、ペルシャやヒマラヤンなどの猫種には遺伝的傾向があるようです。
オスとメスでどちらに多いというものは、今のところ報告されていません。
なお、交通事故によって起こることもあります。
心膜横隔膜ヘルニアでは心臓や肺が常に圧迫されているため、全身へ血液や酸素を十分に送ることができず、呼吸が速くなったり、動いてもすぐに疲れてしまったりします。
また、胃や腸が心臓周囲に入り込むと、嘔吐や下痢などの消化器症状を示すこともあります。
ただ、こうした症状は開いている穴の大きさと、そこから心臓周囲に入り込んだ内臓や、入り込んだ程度によります。
無症状のことも多く、健康診断で偶然見つかることも少なくありません。
多くは4歳以下で診断されますが、そのほとんどは1歳以下の子犬や子猫です。
ほとんどの症例は、レントゲン検査で診断できます。
超音波検査や造影検査、CTなど精密な画像診断をすることもあります。
完治させるためには外科手術が必要です。
手術では、心臓周囲に飛び出した腹腔内の内臓を本来の位置に戻し、開いている穴を塞ぐ「横隔膜整復術」を行います。
ただし、穴が小さく臨床症状のない場合や、高齢や他の病気で手術に耐えられそうにない場合は、手術をせずに経過を見ることもあります。
横隔膜整復術は当院でも行っておりますので、横隔膜心嚢膜ヘルニアの手術についてご相談がある場合は、当院までご連絡ください。
この病気は先天性の疾患なので、予防法はありません。
若くて元気であれば手術に耐えられ、完治を望めますので、早期に発見して早期に治療することが重要です。
一見元気な子犬や子猫であっても、健康診断で偶然見つかることもあります。
定期的なレントゲン検査も含めた健康診断で、早期発見に努めましょう。
横隔膜ヘルニアについてはこちらのページでも詳しく解説しています
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<参考文献>
Kazemi Mehrjerdi H, Rajabion M, Mirshahi A, Sajjadian Jaghargh E. A retrospective study on diaphragmatic hernia in cats. Vet Res Forum. 2022;13(4):607-610.
Burns CG, Bergh MS, McLoughlin MA. Surgical and nonsurgical treatment of peritoneopericardial diaphragmatic hernia in dogs and cats: 58 cases (1999-2008). J Am Vet Med Assoc. 2013 Mar 1;242(5):643-50.