「停留睾丸(ていりゅうこうがん)」という言葉をご存知でしょうか?
他の言い方として
「陰睾丸(いんこうがん)」や
「停留精巣(ていりゅうせいそう)」、
「潜在精巣(せんざいせいそう)」という呼び方もあり、いずれも同じ意味となります。
停留睾丸の見分け方
猫の睾丸は犬に比べますと体の一部としてさほど目立たず、
わかりにくい方もいらっしゃると思います。
ましてや、停留睾丸かどうかなんて分かる方のほうが凄いと思います。
基本的な見分け方は、ずばり、
「触ってみる」しかありません。
成猫の片側停留睾丸の場合、獣医師であればなんとなく外貌上から判断できる場合もありますが、確定させるのは触診です。
実際、我々獣医師が去勢手術をしようとして麻酔をかけて触って見たら片側の停留睾丸で焦った、なんてこともあるくらいです。
同様に、地域猫(野良猫)やとても神経質で触らせてくれない猫などは手術前提で先に鎮静をかけて診察することもあり、そこで初めて発見される場合もあります。
停留睾丸のパターン
停留睾丸には「両側腹腔内陰睾丸」、「片側腹腔内陰睾丸」、「片側鼠径陰睾丸」、
の3パターンに分かれます。
両側腹腔内陰睾丸
名前の通りですが、
二つある睾丸が両方ともお腹の中にあることを指します。
元々胎児のうちにお腹の中で発生し、発育段階でお腹の中から鼠径部を通ってお腹の外である皮下に移動して、最終的に本来の位置まで出てくるのですが、
その発育過程で問題が生じたことでお腹の中にとどまり腹腔内陰睾丸となります。
ただし、両側腹腔内陰睾丸となるケースは
極めて稀です。
外貌上は去勢している猫と全く見分けがつかないことから、
もし去勢済みの猫と見分けたい場合は病院で
性ホルモンの測定をしてもらうと良いでしょう。
片側腹腔内陰睾丸
これも名前の通り片方の睾丸がお腹の中にある状態を指します。このときもう片方は正常の位置にあります。これを確認するにはどうしたら良いでしょうか?
まずは片方の睾丸が正常の位置にあることを確認します。
それが右と左のどちら側の睾丸なのかを見極めます。
確認するコツとしては、睾丸は比較的皮膚の下で自由に動きますのでその睾丸をお腹に向けて少し押してあげるのです。
そうすると、右の睾丸なら右の鼠径部に向かって動きます。同じく左の睾丸なら左鼠径部へと少し動きます。これによって無い側の停留睾丸がどっち側なのかを確認するのです。
そして、無い側の睾丸がお腹の中なのか鼠径部など途中で引っかかっていないかを触って探していきます。これが本当に難しいのです。
ある程度8〜9ヶ月くらいまで大きくなると皮下脂肪も厚くなり、睾丸自体が触りづらくなります。しかも正常位置に達しなかった睾丸は正常のものと比べると1/2から1/3位と小さく、正常の大きさに達していません。この小ささも発見しづらい要因となっています。
なぜ睾丸がどこに存在しているか見極めないといけないかというと、
手術方法に大きな差が生まれるからなのです。お腹を開けなければ睾丸が取り出せないかどうかを判断しなくてはならないため、お腹の外なのか中なのかを見極めることに獣医師は全力を注ぎます。
片側鼠径陰睾丸
この場合は、片方の睾丸が鼠径輪と呼ばれる血管や精管がが通る通り道の穴あたりで引っかかってしまうことを指します。
これも片側腹腔内陰睾丸では無いのかどうかをきちんと確認しなければならないので大変です。
上記にもありますが、正常な位置に無い睾丸はとても小さく、その上皮下脂肪に隠れてわかりづらくなっています。
そのため、「触って確認する」という基本プロセスがとても難しくなるのです。
去勢手術の際は探してもらう覚悟で

以上のように、どのパターンでも事前にしっかりさわれなかった場合は、手術方法の選択は獣医師に任せるしかないと思います。
初めからお腹を開けるべきか、先に鼠径部を開いて確認するのか、獣医師によっても考えや方法は異なる場合がありますので、去勢手術を検討される場合は獣医師とよく相談することをお勧めします。