私たち獣医師は良く、手術のリスク(=危険)という言葉を使うことがあります。
もちろん手術におけるリスクとは、実際に手術を行ったり麻酔をかけることで、動物が死亡したり、重篤な合併症を起こしてしまうということです。
それは獣医師の腕次第?
確かにそうかもしれませんが、手術のリスクを決めるのはそれだけではありません。
では、獣医師が手術のリスクを高く感じるのはどのような時なのでしょう?
飼い主がその鍵を握っている場合もあるのです。
今回は安全に手術を行うために、飼い主に協力しておいてもらいたいポイントをいくつかご紹介させて頂きます。
年齢は若いうちに

メス猫の避妊手術をおすすめする時期は生後6ヶ月以降。
適切な時期が来たら、早めに避妊手術を行ってあげて下さい。
やはり
高齢になれば、麻酔や手術のリスクは高まります。
循環器や呼吸器の機能、麻酔後の合併症など、体力のある若い猫に比べると注意するべき点は数多くあります。
また、乳腺腫瘍や子宮蓄膿症といった、メス猫特有の病気の予防も避妊手術の大きな役割です。
病気になってから…では遅いですからね。
外へ出さない

基本的に猫は室内飼いをおすすめします。
もちろん感染症や事故の予防が一番の理由です。
避妊手術においても
「外でどのような生活をしているかわからない」というのは重要な要素になります。
手術中に予期せぬ妊娠が発覚したり、ウイルス感染症に感染していたり、麻酔前の絶食が不十分であったり。
外へ出ることで様々なデメリットが生じるでしょう。
手術後も術部は出来るだけ清潔に保ちたいですからね。
太らせない

コロコロと太った猫が可愛い。という声はあるかもしれません。
しかし、
飼い主が考える以上に、肥満は「安全な手術」の妨げとなるのです。
重度肥満の猫では、手術に必要な麻酔量は増え、麻酔が体から排泄もされるのも遅くなります。
呼吸器のトラブルも引き起こし易いでしょう。
そして、とにかく手術がやり難いのです。
獣医師としてみると、肥満で良いことは一つもありません。
術前検査は十分に

避妊手術の術前検査としては、血液検査やレントゲン検査が主になるでしょう。
検査の内容は動物病院によって多少異なりますが、先天的な異常ななさそうか、基礎的な病気を持っていないか、麻酔の代謝や排泄に問題が無いか等、手術前に確認を行います。
これらは健康診断も兼ねて十分に行うようにして下さい。
問題がある場合は麻酔や手術のリスクを考慮して、延期や中止を検討しなくてはいけません。
術前検査をしっかりと行っていても、残念ながら全ての病気を発見できる訳ではありません。
しかし、事前に気付いてあげられることであれば、やはり気付いてあげたいものです。
まとめ
安全な手術かどうか決めるのは獣医師だけではありません。
病気の治療においてもそうですが、獣医療は飼い主の力なしには中々上手くいかないものです。
愛猫が出来る限り安全な手術に臨めるように、ぜひ一緒に準備をしておきましょう。