冬の冷え込みが本格化すると、犬や猫の体にもさまざまな変化が起こりやすくなります。
特に注意したいのが、「関節の痛み」や「皮膚の乾燥・かゆみ」といった症状です。人間と同じように、寒さや乾燥によって体の不調が出やすくなる季節でもあります。
こうした影響は、シニアの子や関節・皮膚に持病のある子では特に強く現れることがありますが、普段は元気な子でも、気づかないうちにストレスや違和感を抱えていることもあります。
今回は、寒い季節を少しでも快適に過ごすために、飼い主様がご自宅で取り入れやすい室内ケアの工夫について、わかりやすくご紹介します。

■目次
冬場は気温が下がり、空気も乾燥するため、犬や猫の体にさまざまな影響が出やすくなります。とくに注意したいのが、以下の3つのトラブルです。
◆ 関節の痛み・こわばり
気温が下がると血行が悪くなり、筋肉や関節の柔軟性が低下します。これにより、関節炎や変形性関節症を抱える子はもちろん、年齢とともに関節が弱ってきたシニアの犬・猫にも、痛みや動きの鈍さが目立つようになります。
◆ 皮膚の乾燥・かゆみ
冬は空気が乾燥し、さらに暖房によって室内の湿度が低下します。その影響で皮膚のバリア機能が弱まり、かゆみやフケ、皮膚の赤み、掻き壊しなどのトラブルが起こりやすくなります。
特に皮膚がもともと弱い子や、アトピー性皮膚炎などの持病がある子では、冬場の症状悪化に注意が必要です。
◆ 静電気によるストレス
冬の乾燥で被毛に静電気がたまると、ブラッシング時に「バチッ」と痛みを感じることがあり、それをきっかけにブラッシングを怖がるようになる子もいます。撫でられるのを嫌がったり、毛並みが乱れたりするだけでなく、毛づくろいのしすぎで皮膚を傷つけてしまい、舐め壊しや脱毛、炎症につながるケースもあるため注意が必要です。
冬の不調を防ぐためには、まず室内の温度と湿度を適切に保つことが重要です。
犬にとって快適な室温は21〜25℃、猫は18〜23℃が目安とされています。
ただし、子犬・子猫やシニア、短毛種の犬猫は体温調整が苦手なこともあるため、少し高めに設定すると良いでしょう。
また、床に近い位置はどうしても冷えやすいため、ベッドや毛布を床から少し浮かせ、冷気がたまりやすい窓際や玄関を避けて配置することもポイントです。
冬の湿度は50〜60%を保つのが理想です。乾燥が進むと皮膚トラブルや静電気の原因になるので、加湿器を上手に使って湿度を保ちましょう。
ただし、過加湿による結露やカビのリスクもあるため、こまめな換気や湿度計での確認を忘れないようにしましょう。
寒さによって関節の不調が出やすくなる冬には、生活空間の見直しがとても大切です。
◆ 滑りや段差への配慮
フローリングは滑りやすく、関節への負担が大きいため、滑り止めのマットやカーペットを敷くことをおすすめします。
階段やソファの上り下りがあるおうちでは、スロープを設置するだけでも負担を減らすことができます。
◆ 体を冷やさない生活動線
冷気は窓や玄関から入りやすく、こうした場所にベッドを置いていると犬猫が体を冷やしてしまいます。ベッドの位置は部屋の中心や、日差しの差し込む場所など、温かく静かなスペースに移動させましょう。
また、寒い床に長時間座り込まないよう、ふわふわのマットやクッションを複数箇所に配置してあげるのもよい工夫です。
◆ 血流を促す軽い運動
寒いからとじっとしていると血行が悪くなり、関節のこわばりが強まります。室内での軽いストレッチやおもちゃ遊び、短めのお散歩をこまめに取り入れ、無理なく体を動かす時間をつくりましょう。
ただし、いきなり激しく動くのは逆効果です。歩行からゆっくり始め、関節を温めるウォーミングアップを行ってから運動させましょう。
乾燥と静電気から皮膚を守るためのケアも、冬には欠かせません。
◆ 水分補給で内外から潤いを
皮膚のバリア機能を保つには、室内の湿度管理だけでなく、体の内側からの水分補給も欠かせません。
フードをウェットタイプに変えたり、スープを少量加えてみたりするなど、自然に水分摂取量を増やす工夫もおすすめです。
◆ 保湿ケアはシンプルに、でも継続的に
皮膚が乾燥しやすい冬は、動物用の保湿ローションやスプレーを使ってあげるとよいでしょう。お腹や内股など毛の少ない部分はとくに乾燥しやすいため、こまめな保湿が効果的です。
一方で、シャンプーのしすぎは皮膚の脂分を奪い、逆に乾燥を悪化させる原因になります。冬場は頻度を控えめにしつつ、皮膚の状態に合った低刺激のシャンプーを選びましょう。どの製品がよいか迷う場合は、いつでもご相談ください。
◆ 静電気を抑えるための工夫
静電気対策としては、ブラッシング前に保湿スプレーを軽く吹きかけると、摩擦を減らして静電気の発生を抑えることができます。
また、毛布やベッドの素材も見直しポイントです。フリースなどの化学繊維は静電気を帯びやすいため、綿素材や帯電防止加工されたものを選ぶと安心です。
冬の不調が「季節的なもの」と思われがちですが、実はその陰に病気が隠れていることもあります。以下のような症状が見られたら、できるだけ早めに動物病院へご相談ください。
・歩きたがらない、散歩を嫌がる
・段差を避ける、ソファや階段を使わなくなる
・立ち上がりに時間がかかる、足をかばうような仕草
→ 変形性関節症や関節炎、神経のトラブルが関係していることがあります。
▼変形性関節症についてはこちらで解説しています
▼関節炎についてはこちらで解説しています
・フケが増えた
・赤みやかさぶた、ただれが見られる
・特定の部位を舐め壊す、かきむしる
→ 皮膚炎、アレルギー、感染症などの早期治療が必要なケースもあります。
▼アレルギー性皮膚炎についてはこちらで解説しています
「様子を見よう」と放置することで症状が悪化してしまうこともあるため、気になる変化があれば早めの受診を心がけましょう。
当院では、まず丁寧に様子を伺い、触診や必要に応じてレントゲンで原因を確認します。
関節がつらそうな子には、痛み止めや関節サプリのご提案に加え、体にやさしい鍼やレーザー治療なども選択肢としてご案内します。
皮膚トラブルについては、その子の状態に合わせて保湿ケアやシャンプー方法をご提案します。おうちでの加湿や寝床づくり、ブラッシングのコツなど、日常でできる工夫もスタッフがわかりやすくお伝えします。
「この程度なら様子を見てもいいのかな…」と迷うときこそ、早めにご相談ください。小さな違和感のうちに整えてあげることで、冬もいつも通り快適に過ごせるよう一緒にサポートします。
寒さと乾燥が続く冬は、犬や猫にとって体への負担が大きくなる季節です。関節の痛みや皮膚のかゆみ、静電気によるストレスといった不調も、室内環境や日常ケアの工夫で大きく軽減することができます。
もし気になる変化があった場合は、「季節のせい」と見過ごさず、早めにご相談ください。
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