愛犬が年齢を重ねるにつれて「歩き方がぎこちない」「階段を登りたがらない」といった様子が見られることがあります。
犬も人と同じように、シニア期に入ると関節や筋肉の衰えが進み、日常の動作に負担がかかりやすくなります。なかには、関節炎や関節の変形といった疾患が徐々に進行しているケースもありますが、犬は痛みを隠す傾向があるため、気づいた時にはすでに症状が進んでしまっていることも少なくありません。
今回は、シニア犬に起こりやすい関節トラブルの特徴と、日常生活でのケア方法についてご紹介します。

■目次
シニア期の関節トラブルは、さまざまな要因が重なって起こります。
◆ 加齢による関節の変化
年齢を重ねると、関節のクッションの役割をしている軟骨が少しずつすり減っていきます。すると関節の動きが滑らかでなくなり、炎症が起きやすくなったり、関節炎などのトラブルにつながったりすることがあります。
▼関節炎についてはこちらで解説しています
◆ 筋力の低下
筋肉は関節を支えるために欠かせない存在ですが、加齢とともに筋肉量が自然と減少していきます。筋力が弱まると、関節への負担が大きくなり、痛みや不安定な動きにつながることがあります。
◆ 体重の増加
活動量が減ってくると、食事量が変わらなくても体重が少しずつ増えていくことがあります。余分な体重はそのまま関節への負荷となり、痛みの悪化や変形の進行につながる恐れがあります。
▼変形性関節症についてはこちらで解説しています
◆ 生活環境の影響
フローリングなど滑りやすい床や、段差が多い住環境では、関節に大きな負担がかかります。若い頃は平気だった動作も、年齢とともに危険を伴うようになります。
◆ 若い頃のケガや犬種の影響
過去に足を痛めたことがある犬や、胴長短足(ダックスフンドなど)、大型犬(ラブラドールやゴールデンなど)などは、もともと関節に負担がかかりやすく、シニア期に症状が出やすい傾向があります。
シニア犬の関節トラブルは、突然強い痛みが出るというよりも、時間をかけてじわじわと進行していくのが特徴です。そのため、日常生活の中で見られる“ちょっとした変化”に早く気づいてあげることが、早期発見・早期対応につながります。
・歩き方がぎこちない、片足をかばうように歩く
・ソファや階段の上り下りを嫌がるようになった
・立ち上がるまでに時間がかかる
・散歩に行きたがらない、途中ですぐ帰ろうとする
・足や腰に触られるのを嫌がる、怒ることが増えた
これらの変化は、「年のせいかな」と思ってしまいがちですが、関節炎や変形性関節症などの病気が進行している可能性もあります。
関節に不安があるシニア犬にとって、段差は思っている以上に大きな負担になります。若い頃は平気だったソファやベッドへの飛び乗り・飛び降り、階段の上り下りも、関節や腰に強い衝撃を与えてしまうことがあります。
日常生活では、以下のような対策を心がけましょう。
◆ ソファやベッドの上り下り
ソファやベッドの横にスロープや踏み台を設置し、ゆっくり昇り降りできるようにしましょう。階段式のステップやカーペット貼りのスロープが便利です。
◆ 階段の上り下り
日常的に階段を使う生活環境であれば、なるべく使用を減らす工夫をしましょう。たとえば、生活スペースを1階にまとめたり、必要に応じて飼い主様が抱っこして移動させてあげたりするのも、関節への負担を減らすためのひとつの方法です。
◆ トイレや寝床の位置にも配慮を
なるべく段差の少ない場所、移動距離の短い位置にトイレやベッドを設置してあげましょう。体を無理なく休められるクッション性のあるベッドもおすすめです。
日々の暮らしの中で、愛犬がどこに負担を感じているかを観察し「段差を減らす・移動を楽にする」工夫を取り入れることで、関節へのストレスを大幅に軽減できます。
フローリングなどの滑りやすい床は、関節や腰にトラブルを抱えるシニア犬にとって大きなリスクになります。足が滑って踏ん張れないことで、関節や筋肉に余計な力がかかり、転倒や慢性的な痛みの原因になることもあります。
◆ 滑り止めマットやラグを敷く
歩く場所に滑り止め付きのマットやラグを敷くことで、足元が安定します。特に、よく歩くルート(リビング、廊下、寝床までの道など)に敷くと効果的です。
◆ 部分敷きでもOK
すべてをカバーできなくても大丈夫です。段差のある場所やカーブになっている場所、犬がよくジャンプする場所など、ピンポイントで敷くだけでも十分な効果があります。
シニア期に入ると、代謝が落ちたり運動量が減ったりすることで、体重が増えやすくなります。しかし、体重の増加はそのまま関節への負担となり、関節炎や腰痛の悪化を引き起こす要因にもなります。
だからこそ、「体重管理」は関節の健康を守るうえで最も基本的かつ効果的なケアのひとつです。
◆ 食事の見直し
運動量が減ってくるシニア期には、若い頃と同じ食事内容ではカロリーオーバーになりやすいです。関節に配慮した栄養素(グルコサミン、コンドロイチン、オメガ3脂肪酸など)を含むシニア用のフードに切り替えることも検討しましょう。食事の内容や量については、獣医師と相談しながら調整すると安心です。
◆ 適度な運動
運動不足も関節の硬化や筋力低下を招きますが、過度な運動は逆に関節を痛めてしまうこともあります。ポイントは「短時間でも毎日こまめに」そして「関節に優しい運動」を心がけることです。
無理なく継続できる運動を習慣にすることで、筋肉の維持と関節の柔軟性を保つことができます。
段差を減らす、滑らない床に変える、体重管理をするなど、日常生活での工夫は、シニア犬の関節を守るうえで非常に重要です。しかし、それだけでは関節の奥に潜む痛みや進行性の疾患に十分対応しきれない場合があります。
◆ 進行性の関節疾患は、放置すると悪化します
シニア犬に多く見られる「変形性関節症」や「慢性的な関節炎」は、ゆっくりと進行する病気です。骨の変形が起きてしまうと、元の状態に戻すことは難しく、痛みも強くなっていきます。
早期に発見し、必要に応じて薬やサプリメント、物理療法などを取り入れることで、進行を遅らせ、痛みをやわらげることが可能です。
◆ ケアが足りているか判断するのは難しい
飼い主様が頑張ってケアをしていても、それが本当に愛犬に合っているかを見極めるのは簡単ではありません。
たとえば、「これくらいの散歩なら大丈夫」と思っていても実際には関節に負担がかかっていたり、滑り止めマットの配置が不十分だったりするケースもあります。
こうした理由から、ご家庭でのケアに加えて、獣医師による定期的な診察を受けることが、シニア犬の関節トラブルを早期に察知し、適切な治療につなげるために欠かせません。
専門的な視点で状態を評価してもらうことで、本当に必要なサポートを受けることができます。
関節のトラブルは、見た目では判断しづらいものです。だからこそ、獣医師による診察や専門的な検査を取り入れることが、シニア犬の関節ケアではとても大切になります。
◆ 診察ではどんなことをするの?
まずは歩き方や立ち上がるときの動作、姿勢などを丁寧に観察し、関節の動きや痛みの有無を確認します。さらに必要に応じて、レントゲン検査やエコー検査といった画像診断を行い、骨の変形や関節炎、靭帯の異常などがないかを詳しく調べます。
◆ 症状や進行度に合わせたケアが受けられます
診察の結果に応じて、痛み止めや抗炎症薬を処方したり、関節の炎症を和らげるためのサプリメントを提案したりすることもあります。
また当院では、レーザー治療や鍼治療、オゾン療法といった体にやさしい補助療法も取り入れており、愛犬の状態に応じて柔軟に対応が可能です。
◆ 「定期健診」で早期発見と予防を
関節の病気は、症状が出たときにはすでに進行しているケースが多いため、早めの対策がカギになります。
特にシニア期に入ったら、「年に2回の健康診断」を受けることで、ちょっとした異変にも早く気づくことができます。
シニア犬の関節を守るためには、日々のちょっとした工夫が大きな差につながります。段差・床・体重管理を見直し、愛犬にとって無理のない生活環境を整えてあげましょう。
そして、飼い主様が「最近動きが鈍くなってきたかな?」と感じたときが、早めの対応のチャンスです。
「歳のせいだから」とあきらめず、まずはお気軽にご相談ください。
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