華やかで楽しいこの季節は、家族と過ごす時間も増え、いつもより少し特別な雰囲気になりますよね。
しかしその一方で、犬や猫たちにとっては、ふだんと違う環境や食べ物に囲まれることで「思いがけないトラブル」が起こりやすい時期でもあります。中でも特に多いのが、「食べてはいけないものを食べてしまった」という誤食・誤飲のトラブルです。
当院にも、年末年始には毎年「串を食べてしまった」「おせちの黒豆をたくさん食べた」「飾り物のリボンを飲み込んだ」など、さまざまなご相談が寄せられます。
中には一刻を争う緊急手術や入院が必要になるケースもあり、飼い主様が「もっと早く気づいていれば…」と後悔されることも少なくありません。
そこで今回は、犬や猫にとって年末年始がなぜ危険なのか?という背景から、実際によくある誤食の例や対処法・予防のコツまでを、飼い主様にわかりやすくご紹介します。

■目次
ふだんは誤食なんてしない子でも、この時期だけは注意が必要です。理由は主に以下のとおりです。
◆ 特別な食事が増える
おせち料理やすき焼き、年越しそば、お雑煮など、年末年始ならではの特別なごちそうがテーブルに並びます。こうした料理の香りは、犬や猫の興味を引きやすく、つい近づいてしまう原因になります。特に味の濃い料理や、甘い食材は要注意です。
◆ 家の中の“環境”が変わる
門松やしめ飾りといった飾り物、来客の荷物、ゴミの量。普段と違う物が増えることで、興味を持った犬や猫が口に入れてしまうことがあります。
◆ 飼い主様の注意が行き届きにくい
来客対応や帰省準備で家がバタバタしていたり、家族全員が気を抜いていたりすると、普段なら未然に防げた誤食が起こることもあります。
おせちは日本の伝統的なごちそうですが、人間用に濃い味付けがされた料理は、犬や猫にとって塩分や糖分が過剰だったり、身体に有害な成分を含んでいたりすることも少なくありません。見た目がきれいで香りも強いため、動物たちがうっかり口にしてしまうリスクが高まります。
① 味付けが濃い人間用料理
・昆布巻き:塩分が高く、腎臓に負担をかける可能性があります
・黒豆:甘く煮てあることが多く、糖分の摂りすぎにつながります
・田作り(ごまめ):小骨が鋭く、のどや消化管を傷つけてしまうことがあります
② 中毒を引き起こす食材
・ぶどう・レーズン:少量でも腎臓に悪影響を及ぼす可能性があります
・ネギ類(玉ねぎ・長ネギ・にんにくなど):赤血球を壊してしまい、貧血や黄疸の原因に。加熱しても危険です。
・チョコレート・ココア:中毒症状(興奮、ふるえ、嘔吐、心臓への影響)を引き起こします。
・エビ・カニ:消化不良やアレルギー反応を起こすことがあります。
③ 骨のある料理や“残り物の骨”
・焼き鳥の骨・鶏の骨:縦に割れる性質があり、鋭くとがった破片が胃腸に突き刺さる恐れがあります。
・魚の骨:丸呑みして腸閉塞になるケースもあります。
▼腸閉塞についてはこちらで解説しています
食べ物だけが危険ではありません。この時期ならではの“誤飲しやすいモノ”にも注意が必要です。
・竹串・つまようじ
胃や腸を突き破る事故も。ゴミ箱のフタが開いていたり、落ちたまま放置されたりすることで起こるケースが多いです。
・飾り物(門松・しめ飾りなど)
しめ縄の“紙垂(しで)”や飾り玉、金色の紐などは、特に猫が興味を持って遊ぶうちに飲み込んでしまうことがあります。
針金やプラスチック製のパーツも含まれているため、非常に危険です。
・アルミホイル・食品包装フィルム
餅やかまぼこの包装などを食べてしまうと、腸に詰まり手術が必要になることもあります。
食卓の下に落ちた包装の切れ端も見落とさないよう注意しましょう。
・来客のバッグや荷物の中身
外からの訪問者が持ち込むガム(キシリトール入り)や薬を、犬猫が勝手に口にしてしまうケースもあります。
バッグの置き場所や保管場所には十分注意してください。
以下のような症状が見られた場合は、迷わず動物病院へご連絡ください。
・嘔吐、吐こうとしているが出ない
・よだれが増える
・落ち着きがない、そわそわしている
・お腹を丸める・触ると嫌がる
・元気がない、うずくまる
・呼吸が浅く速い
・口の中が真っ赤、または真っ白
・血便や下痢
※特に串や骨、包装フィルムを誤飲した場合は、症状が出ていなくても早急な受診が必要です。
誤食を防ぐいちばんの方法は、“危険なものを近づけないこと”です。
・テーブルや床に食べ物を置きっぱなしにしない
・食べ残しや骨はすぐ片づける
・ゴミ箱はふた付き、倒れないタイプを選ぶ
・飾り物は届かない高い位置に
・来客時や留守中はケージや別室で過ごしてもらう
・子犬・子猫は“床にあるもの=何でも口にする”と思って行動する
年末年始は特に忙しくなりますが、大切なご家族が安全に過ごせるよう、少しだけ「いつもより慎重に」を意識してみてください。
焦る気持ちは分かりますが、自己判断での対応は、かえって危険を招くこともあります。
・食べたものをネットで調べて「大丈夫そう」と判断して様子を見る
・無理に吐かせようとする(食道や喉が傷つくことも)
・「今は元気だから問題ない」と様子見する
・「証拠がないからきっと食べていない」と考える
少しでも「もしかして」と思ったら、まずは動物病院にお電話ください。何を食べたか、いつ食べたか、どのくらいの量か分かれば、より適切な判断・処置が可能になります。
当院では、以下のような流れで対応しています。
1. 問診・身体検査
まずは「いつ・何を・どれくらい食べたか」をお伺いします。
2. 画像検査(レントゲン・超音波)
誤飲・誤食した物をレントゲンや超音波検査(エコー)で確認します。
3. 催吐処置(吐かせる処置)
誤食からそれほど時間が経っておらず、食べた物の内容によっては安全な薬を使って吐かせる処置を行います。
4. 内視鏡による異物除去
吐かせることができない場合や、すでに胃の奥に異物が移動してしまっている場合には、内視鏡を使って直接異物を取り除く処置が選ばれることもあります。
5. 開腹手術
異物が腸に詰まり、腸閉塞を起こしている場合や、飲み込んだ物が腸や胃を傷つけている場合は、開腹手術が必要になることもあります。
誤食・誤飲の初期対応は、時間との勝負です。「どのくらい前に食べたのか」「どんな物か」によって対処法が変わるため、少しでも心当たりがあれば、まずは動物病院に連絡し、指示を仰ぎましょう。
年末年始は、家族で過ごす楽しい時間が増える反面、愛犬・愛猫にとっては危険が増えるシーズンでもあります。
おせち料理、飾り物、来客のバッグや薬、そして年末の大掃除後に出るゴミ…。
いつもは気をつけていても、「ちょっと目を離したすきに」「まさかこんな物を…」という誤食・誤飲の事故が起こりやすくなるのが、この時期です。
こうした事故の多くは、早めに気づいて対処することで、重症化を防ぐことができます。
少しでも「おかしいな」「もしかしたら食べたかも」と感じたら、決して様子見せず、早めに動物病院を受診しましょう。
光が丘動物病院グループ各院は年末年始も休まず診療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
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