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犬と猫のライソゾーム病について│遺伝病のため繁殖計画には気をつけよう

2023.04.28
犬の病気猫の病気

ライソゾーム病とは、細胞内にあるライソゾーム(リソソーム)という小器官にある分解酵素のどれかが作られないために起こる遺伝病の総称です。
ライソゾームは、糖質や脂質といった体内の老廃物を分解する役割を持つため、ここの酵素が欠けることで様々な障害が起こります。
犬や猫ではGM1およびGM2ガングリオシドーシス、セロイドリポフスチン症、ムコ多糖症などが報告されており、これらは子犬や子猫の時期から発症します。



原因|劣性遺伝による先天性疾患


ライソゾーム病は先天性(生まれつき)の疾患で、その原因はライソゾーム内の酵素を合成する遺伝子の異常です
本病は劣性遺伝で、両親がこの遺伝子を持っていれば子に受け継がれますが、父親または母親のどちらか一方であれば発症しません
どの犬種や猫種でも発生はありますが、特にGM1ガングリオシドーシス柴犬に、セロイドリポフスチン症ボーダーコリーチワワに多いとされています。

 

症状|歩き方の異変からはじまり、急激に進行する


ライソゾーム病では、脳をはじめ全身の臓器に老廃物が蓄積するため、様々な神経症状が現れます。
うまく歩けない転ぶなどの運動障害や、性格の変化頭を振る音に過敏になる震える眼振などの異常が見られます。
ムコ多糖症やオリゴ糖蓄積症では、顔つきの変化が見られることもあります。

進行すると麻痺や視覚障害、意識障害など重篤な症状が現れ、やがて命を落とす可能性があります

発症も早く、GM1ガングリオシドーシスは生後5〜6ヶ月くらいから、GM2ガングリオシドーシスは生後2ヶ月くらいから、セロイドリポフスチン症は1〜2歳くらいからと、ほとんどが子犬・子猫の時期から発症します。

 

診断|遺伝子検査も含めて総合的に判定する


遺伝子検査で異常が見られる場合もありますが、発症した犬や猫でも遺伝子変異が特定されない場合もあります。
確定診断には病理組織検査が必要ですが、これは生前には行えません。
本病は、検査の結果や治療への反応、発症年齢や犬種などから、総合的に診断します。

 

治療|根本的な治療法はない。治療は症状の緩和が目的


現在、ライソゾーム病に対する治療法はなく、若齢のうちになくなってしまうことがほとんどです
対症療法で症状を和らげ、生活の補助などを行い、生活の質(QOL)の向上を目指します。

 

予防|遺伝病のため繁殖には注意が必要


本病は遺伝病のため、発症する犬や猫が生まれないためにも、両親や兄弟など、血縁のある犬や猫での発症には十分注意して繁殖計画を立てることが重要です
また、万が一発症してしまった場合は、お早めに連れていらしてください。

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<参考文献>

Barbara J Skelly, Robin J M Franklin. Recognition and diagnosis of lysosomal storage diseases in the cat and dog. J Vet Intern Med. 2002 Mar-Apr;16(2):133-41.

Osamu Yamato, Asogi Kobayashi, Hiroyuki Satoh, Daiji Endoh, Toru Shoda, Yukiko Masuoka, Ayano Hatakeyama, Eun-Og Jo, Tomoya Asano, Madoka Yonemura, Masahiro Yamasaki, Yoshimitsu Maede. Comparison of polymerase chain reaction-restriction fragment length polymorphism assay and enzyme assay for diagnosis of G(M1)-gangliosidosis in Shiba dogs. J Vet Diagn Invest. 2004 Jul;16(4):299-304.

 
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