ポリープとは消化管などの粘膜にできる腫瘤(イボ)のことで、炎症が原因で起こるものを炎症性ポリープと呼びます。
犬は大腸、特に直腸での発生が多く、日本では特に中高齢のミニチュアダックスフントの症例が報告されています。
犬にしぶりや血便といった消化器症状が出た場合は、炎症性ポリープである可能性も考え、早めに受診すると良いでしょう。
炎症性ポリープは、名前のとおり腸粘膜の炎症が原因で起こりますが、そもそもなぜその炎症が起こるのかはよくわかっていません。
免疫異常や遺伝性などさまざまな要因が関与しているのではないかと考えられていますが、今のところ特定されていません。
犬種的にはミニチュアダックスフントで集中的に発生しており、特に中高齢での症例が多く報告されています。
ポリープの数や大きさ、位置にもよりますが、ポリープから出血して血便が出たり、便自体が出にくくなったり、下痢をしたりします。
よく見られる症状は「しぶり」で、便意があるのにすっきりと出ないため、何度もトイレに行って排便姿勢をとるのに、少ししか出ないなどの変化が見られます。
ほか、発熱、元気の消失や食欲の低下が見られる場合や、逆に無症状の場合もあります。
本病の特徴といえる症状は、原因不明の治らない・再発する消化器症状です。
症状自体は他の大腸性下痢の原因となる病気と共通しているため、症状のみで本病を診断することはできません。
炎症性ポリープでは一般的な大腸性の下痢症状が見られるため、他の病気の可能性を除外しながら診断します。
慢性腸症の診断とも共通しますが、糞便検査や血液検査、超音波検査、レントゲン検査などの検査で総合的に判断します。
なお、慢性腸症の診断は以下の基準で行われます。
・対症療法に反応するか否か
・再発性の慢性の消化器症状であるか否か
・一般的な血液検査や画像検査で原因がわかるか否か
また、慢性腸症の中でも、さらに分類することができ、
・繊維食で下痢が収まるか否か
・抗菌薬を利用することで下痢が収まるか否か
治療の結果を見ながら分類を行い、最終的に判断がつかない場合に内視鏡検査で病理検査を行っていきます。
内視鏡検査でポリープが発見された場合は、ポリープの一部または全部を採取して、組織検査をかけ、診断します。
ポリープが肛門から近い場所にあり、直腸検査で発見された場合も、内視鏡検査で詳しく腸内を観察し、ポリープを採取して組織検査を行います。
ポリープが作られる原因である炎症を抑えるために、ステロイドなどの免疫抑制剤を投与します。
うまく治療に反応すれば、ポリープがなくなり症状も治まります。
治療しても治らない、再発する、ポリープが大きすぎるなどの場合は、外科手術でポリープや、腸自体を摘出することもあります。
炎症性ポリープは、その原因がよくわかっていないため、予防法はありません。
中高齢のミニチュアダックスフントに多い病気ですので、この犬種を飼育している飼い主さんは、しぶりや血便などの症状が見られたらこの病気も意識して、早めに受診しましょう。
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東京都練馬区に本院を置き、東京都内、埼玉県で4つの動物病院を運営しています