環軸不安定症は、頚椎(首の骨)の一番目である環椎と二番目である軸椎が、脱臼や亜脱臼、不安定な状態になることで頸髄が圧迫される病気です。
主な症状は首の痛みですが、状況次第では急死することもあり、注意が必要です。
犬ではチワワやトイ・プードル、マルチーズ、ヨークシャー・テリアなどで多く、ほとんどは2歳以下で発症します。
目次
1.原因|先天性が主だが、事故などで発生することも
2.症状|多くは2歳以下で発症する。首の痛みとふらつき
3.診断|頸部椎間板ヘルニアなどとの鑑別が重要
4.治療|外科手術での固定が重要
5.予防|急死に至ることもあるので、早期に治療を開始するべき
犬の環軸不安定症は、ほとんどが環椎と軸椎をつなぐ関節や靭帯の発生段階での異常による先天性(生まれつき)のものです。
犬種では、チワワ、トイ・プードル、マルチーズ、ヨークシャー・テリア、ポメラニアンといった小型犬種に多く発生しています。
先天性以外では、事故や怪我など、首に強い衝撃を受けた際に発生することもあります。
先天性のほとんどは2歳以下の若齢で発症しますが、軽症で若いうちは無症状だったものが、中高齢になって悪化して症状を示すケースもあります。
主な症状は首の痛みとふらつきなどの神経症状で、首の痛みから抱き上げると痛がってキャンと鳴く、頭を撫でられるのを嫌がる、上を向こうとしない、頭は下げたまま上目遣いで飼い主を見上げる、元気がないなどの異変が現れます。
また、神経症状はふらつき、歩幅が小さくなる、前足と後足が動きにくい、ふるえる、立てないなど、頸部椎間板ヘルニアとも似ています。
重度の場合は排尿障害を起こすこともあり、症状が悪化して呼吸に障害が出ると急に亡くなってしまうこともあるため、注意が必要です。
環軸不安定症の診断では、頸部椎間板ヘルニアなど、他の神経疾患との鑑別が重要です。
診断では身体検査と神経学的検査に加えて、犬種や年齢などから環軸不安定症を推定したうえで、頸部のレントゲン検査で患部の確認を行います。
加えて、MRIで脊髄の損傷具合を、CT検査で骨の状態を詳細に確認します。
コルセットなどで首を固定し、安静にしながら消炎鎮痛剤で内科的に治療する温存療法もありますが、最低でも2ヶ月ほど安静にしなければならないうえに、完全に固定されることはなく、再発も多いことから、可能な限り、外科手術での固定が推奨されます。
外科手術では不安定になっている関節を固定します。
先天性の環軸不安定症を予防することはできません。
環軸不安定症をはじめ頸髄の神経障害は、普段の症状が軽かったとしても急変して呼吸不全を起こし、死に至ることもある怖い病気です。
特に若い小型犬に、抱き上げると鳴く、頭をあげないなど、気になる症状が見られましたら、お早めに来院してください。
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<参考文献>
Progin A, Voumard B, Friker B, Forterre F. Biomechanical evaluation of two dorsal and two ventral stabilization techniques for atlantoaxial joint instability in toy-breed dogs. Am J Vet Res. 2021 Oct;82(10):802-810.
Fernandes R, Fitzpatrick N, Rusbridge C, Rose J, Driver CJ. Cervical vertebral malformations in 9 dogs: radiological findings, treatment options and outcomes. Ir Vet J. 2019 Apr 23;72:2.