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犬と猫の腎盂腎炎について|細菌性膀胱炎や尿路結石症から波及して起こる

2023.09.29
犬の病気猫の病気

腎盂腎炎は、腎盂という腎臓と尿管をつなぐ部分とその周りに炎症が起こる病気で、主な原因は細菌感染です。

急性と慢性があり、急性の症状は犬や猫に発熱、嘔吐、腎臓の圧痛など比較的わかりやすいのですが、慢性の場合、多飲多尿のみか無症状であることが多く、発見が遅れがちです。

多飲多尿の原因となる犬や猫の病気は多く、それのみで診断することはできませんが、発見が遅れると腎機能の低下や腎不全を招いてしまいます。



目次
1.原因|細菌性膀胱炎や尿路結石症などで滞った尿を通じて腎臓に感染が広がる
2.症状|急性では発熱、圧痛など。慢性は無症状も多い
3.診断|症状や尿検査、血液検査の結果から推定
4.治療|輸液と抗菌剤治療。原因疾患の治療も重要
5.予防|細菌性膀胱炎は初期に治療すること!

原因|細菌性膀胱炎や尿路結石症などで滞った尿を通じて腎臓に感染が広がる


腎盂腎炎の主な原因は細菌感染ですが、感染は細菌性膀胱炎などで膀胱や尿道にいる細菌が腎臓まで到達することで起こります。

通常、尿は腎臓→尿管→膀胱→尿道の順に通って排泄されるため、膀胱や尿道の細菌が腎臓に到達することはありません。

しかし、結石症や前立腺肥大、腫瘍などで尿の通過障害が起こると、腎臓に細菌感染が起こりやすくなります

血流を介して腎臓に感染する場合もありますが、非常に稀です。

 

加えて、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)や猫汎白血球減少症など、免疫力が低下するような病気が原因になることもあります。

 

症状|急性では発熱、圧痛など。慢性は無症状も多い


急性の場合は、発熱、嘔吐、食欲不振、腎臓のあたりを押すと痛がるなどの症状が見られます。一方で慢性の場合は無症状のことが多く、症状があっても多飲多尿程度で、飼い主様も気付かないうちに腎機能が侵され、慢性腎臓病に進行していることもあります。

 

多くは腎盂腎炎の前に、細菌性膀胱炎や尿路結石症、前立腺の病気などの症状が現れます

 

診断|症状や尿検査、血液検査の結果から推定


尿検査で細菌感染が認められ、発熱や嘔吐などの症状と、血液検査で炎症マーカーの上昇が認められれば、腎盂腎炎が強く疑われます。

細菌培養検査や薬剤感受性試験には時間がかかるため、レントゲン検査や超音波検査、尿検査などの結果と症状から腎盂腎炎と推定して、診断的治療を始めます。

 

治療|輸液と抗菌剤治療。原因疾患の治療も重要


輸液と抗菌剤で治療を行い、同時に尿が滞る原因となる病気や、尿路感染症の治療を行います。

菌剤は少なくとも10~14日間、投与し続ける必要があります

また、発熱や嘔吐などの症状があれば、それに応じた治療を並行します。

 

腎臓の機能回復が見込めない場合は、外科手術で罹患している側の腎臓を摘出することもあります。腎臓は2つあるため、1つを摘出しても残りの1つが機能を果たし、日常生活を送ることができます。

 

予防|細菌性膀胱炎は初期に治療すること!


腎盂腎炎は細菌性膀胱炎が波及して起こるため、疑われる症状がある場合は、早めに受診して、重症化しないうちに治してあげましょう。

また、日頃から十分に水分を取ること、トイレをきれいにすることなども、予防に繋がります

なにより、この病気の原因となる病気の早期発見が重要ですので、定期的な検診をお勧めします。

 

膀胱炎についてはこちらのページでも詳しく解説しています
猫の膀胱炎についてはこちらのページでも詳しく解説しています
尿石症についてはこちらのページでも詳しく解説しています
猫の尿路結石症についてはこちらのページでも詳しく解説しています

 

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<参考文献>
Bouillon J, Snead E, Caswell J, Feng C, Hélie P, Lemetayer J. Pyelonephritis in Dogs: Retrospective Study of 47 Histologically Diagnosed Cases (2005-2015). J Vet Intern Med. 2018 Jan;32(1):249-259.
Weese JS, Blondeau J, Boothe D, Guardabassi LG, Gumley N, Papich M, Jessen LR, Lappin M, Rankin S, Westropp JL, Sykes J. International Society for Companion Animal Infectious Diseases (ISCAID) guidelines for the diagnosis and management of bacterial urinary tract infections in dogs and cats. Vet J. 2019 May;247:8-25.

 

 
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