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犬の前立腺膿瘍について|初期の発見が難しく、すでに重症化していることも

2023.09.22
犬の病気

前立腺膿瘍は、前立腺に細菌が感染し、膿が溜まる病気です。

溜まった膿で前立腺が破裂すると、犬のお腹の中で細菌が広がり、大変危険な状態になります。

初期の発見は難しく、気づいた時点で手術も念頭に置いた積極的な治療を行わないと助かりません。

未去勢のオスの犬で発生しやすい前立腺肥大は、前立腺膿瘍の原因とも考えられており、予防には去勢手術が有効です。



目次
1.原因|未去勢の中高齢のオス犬は要注意
2.症状|膿尿、血尿など細菌性膀胱炎と似た症状を見せる
3.診断|尿検査、レントゲン検査、超音波検査など
4.治療|積極的な治療が必要
5.予防|若いうちの去勢手術が鍵を握る

原因|未去勢の中高齢のオス犬は要注意


未去勢のオス犬では、加齢とともに前立腺肥大が起こりやすくなります

肥大した前立腺では前立腺液の流れが悪くなり、前立腺に嚢胞が生じやすくなります。

前立腺膿瘍は、この前立腺嚢胞に感染が起こったものです。

このため前立腺膿瘍は、他の前立腺の病気と同様に、中高齢の去勢していないオス犬で起こりやすい病気です

 

前立腺膿瘍は細菌性の精巣炎の原因となることもあります。

また、溜まった膿で前立腺が破裂すると、お腹の中に細菌が広がり感染性の腹膜炎も起こし、さらに細菌が血液に及ぶと敗血症となり、非常に危険な状態に陥ります。

 

犬の前立腺肥大についてこちらのページでも詳しく解説しています

 

症状|膿尿、血尿など細菌性膀胱炎と似た症状を見せる


一般的な症状は膿尿(クリーム色の膿がまざったおしっこが出る)、血尿(おしっこがピンク色)などで、細菌性膀胱炎といった尿路感染症を繰り返し起こすことも特徴的です。

 

前立腺が腸を圧迫した場合は排便障害が、尿道を圧迫した場合は排尿障害がみられます。

 

ただし、明らかな症状がみられないこともあります

 

腹膜炎や敗血症を起こしている場合は、ぐったりとし、意識がなくなるなど、危険な状態に陥ります

 

診断|尿検査、レントゲン検査、超音波検査など


直腸検査(肛門から指を入れて触診する)で、大きくなった前立腺に触ることができます。

尿検査で細菌を検出し、レントゲン検査や超音波検査で大きくなった前立腺が確認できます。

超音波ガイド下で前立腺に針を刺し、前立腺に溜まった膿を確認できれば、前立腺膿瘍と診断します。

 

治療|積極的な治療が必要


初期に発見することが難しく、発見時にはすでに重症化していることも多いため、発見したらすぐに積極的に治療する必要があります

 

治療では、去勢手術をしたうえで、抗菌剤による内科的治療を行います

また、超音波ガイド下にて、溜まった膿を吸引します。

それでも改善しない場合や、すでに膿瘍が破裂している場合などは、外科手術にて治療を行います。

 

外科手術では、前立腺の内部を洗浄し、必要に応じて部分的に切除した後に、大網という膜で包む大網ドレナージという方法で行います。

 

予防|若いうちの去勢手術が鍵を握る


前立腺膿瘍は、初期での発見が難しく、症状が現れてからでは治療が困難なこともあるため、予防が非常に重要です。

予防には去勢手術が有効ですので、子供を望まないのであれば、若くて健康なうちに去勢手術をすることをお勧めします。

 

犬の去勢手術、予防診療に関しては下記の記事でも解説しています。

当院の避妊手術・去勢手術について

ワンちゃんの去勢手術について

オス犬が遭遇する4つのトラブルについて

去勢犬VS未去勢犬。実際のところ長生きするのはどっち?について

犬と猫の予防診療の重要性について

 

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<参考文献>

Lea C, Walker D, Blazquez CA, Zaghloul O, Tappin S, Kelly D. Prostatitis and prostatic abscessation in dogs: retrospective study of 82 cases. Aust Vet J. 2022 Jun;100(6):223-229. 

 
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