膝関節は体の関節の中で唯一筋肉がなく、靭帯のみで構成されている関節です。その為、過度な負荷がかかると様々な障害が出てきやすい関節です。前十字靭帯は膝関節の運動を過剰になるのを防ぐ役目をしており、損傷すると過度な可動域が生じるため、継続的な痛みが発生します。手術の方法は病院によって様々で、TPLO、TTA、Tight Rope法など色々ありますが、当院ではLateralSuture法を用います。
全身麻酔をかけて、剃毛し消毒を行います。
メスで膝関節の皮膚を切皮します。
膝蓋靱帯と呼ばれる太ももからすねまで続く靭帯を、外側も内側も切開を入れていきます。
膝蓋靱帯とその靭帯が付着する脛骨粗面と呼ばれる膝の少し下の骨も露出させます。
別の犬の写真ですが、十字靱帯の写真です。これは正常な写真。
鉗子で挟んでいるのが、断裂してしまった前十字靱帯です。半月板と呼ばれる組織がその周辺にあるのですが、写真ではわかりにくくてすいません。半月板損傷まで進んでしまった場合、手術はより困難になります。
脛骨粗面にワイヤーを通す為の小さな穴を開けます。
Lateral Suture法では、カーボン製のワイヤーを用いて前十字靭帯の機能と同じ機能を人工的に作り出します。いずれは切れて無くなってしまいますが、それまでに膝の関節は安定化します。まずはワイヤーを種子骨と呼ばれる膝の裏にある小さな骨にひっかけます。これがけっこう難しい。
ワイヤーを引っ張って、ちゃんとした位置にワイヤーが掛かっているか確かめます。
種子骨にうまくワイヤーがかかったことを確認したら、ワイヤーの一方を膝蓋靭帯の下に通します。
先程ドリルで脛骨粗面に開けた穴にワイヤーを通していきます。
ワイヤーを強く結び、膝を固定させます。この時膝は曲がらないように、かつワイヤーが緩まないように保持するため、執刀者だけでなく助手も大変です。
手術の手技上、靭帯を切除しながら手術を進めるので、切除した靭帯は元の位置に戻るように縫い合わせます。
縫合一つ一つも気が抜けません。これで完璧です。
とにかく早く治ってくれるよう、気持ちを込めて縫い合わせます。