「最近、うちの子が階段をのぼるのをためらったり、いつもより寝ている時間が長い気がする…」そんなちょっとした変化を感じたことはありませんか?
梅雨時期や雨の日は、気圧や湿度の変化により犬や猫の体調にも影響が出やすくなります。特に関節に問題を抱えている子やシニアの子では、関節を包む「関節包」が気圧の変化で膨らみやすくなり、神経が刺激されて痛みや違和感が出やすくなるといわれています。
また、雨が続くと散歩や運動の時間が減ってしまい、筋力低下や体重増加、気分の落ち込みにもつながりやすくなります。
だからこそ、関節や体への負担をやわらげながら、運動不足を防ぐ工夫が大切になります。
今回は、そんな梅雨時期に気をつけたい「犬や猫の関節トラブル」と「雨の日の過ごし方」に焦点をあて、飼い主様が日常の中で取り入れられる予防と対策のポイントをわかりやすくご紹介します。
■目次
関節のトラブルは、年齢や体格、犬種・猫種の特性、生活環境など、さまざまな要因が関係しています。以下に、関節トラブルを起こしやすい犬や猫の主な特徴をご紹介します。
◆ 高齢の犬や猫
シニア期になると、これまでの関節への負担や軟骨のすり減りにより、変形性関節症や変形性脊椎症などのリスクが高まります。
「年のせい」と見過ごされがちですが、犬や猫にとってはしっかりとした痛みや違和感を伴うため、早めのケアが大切です。
▼変形性関節症についてはこちらで解説しています
◆ 関節疾患の好発犬種・猫種
関節のトラブルは、犬種や猫種の特性によって起こりやすいものもあります。
・ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバー:股関節形成不全
・トイ・プードル:膝蓋骨脱臼
・ダックスフントやマンチカン:椎間板ヘルニア
▼股関節形成不全についてはこちらで解説しています
▼膝蓋骨脱臼についてはこちらで解説しています
▼椎間板ヘルニアについてはこちらで解説しています
※フレンチ・ブルドッグやスコティッシュ・フォールドなど、骨格的に若齢から関節異常が出やすい犬や猫もいます。
◆ 過去に関節疾患を起こしたことがある犬や猫
前十字靭帯断裂などの既往がある場合、同じ関節や周辺に再度負担がかかりやすく、再発リスクが高くなります。
▼前十字靭帯断裂についてはこちらで解説しています
◆ 肥満傾向の犬や猫
体重が増えることで関節にかかる負荷が大きくなり、炎症や痛みの原因になります。
◆ 運動の過不足がある犬や猫
運動不足が続くと筋力が低下し、関節を支える力が弱くなってしまいます。一方で、過度な運動は関節への負担を増やし、炎症や痛みの原因となることがあります。
◆ 住環境による負担
滑りやすいフローリングや、頻繁な階段・ソファの上り下りといった生活環境が、関節に負担をかけているケースもあります。
犬や猫が最も多くの時間を過ごすのは、家の中です。そのため、関節に負担をかけない環境を整え、無理のない運動習慣を取り入れることが大切です。
◆ まずは「環境面」の見直しを
室内の床が滑りやすいと、足元が安定せず、関節や腰に余計な負担がかかってしまいます。以下のような工夫で、関節にやさしい生活スペースを整えてあげましょう。
・フローリングにはカーペットや滑り止めマットを敷く
・階段やソファなど段差のある場所にはスロープやステップを設置する
・足裏の毛をこまめにカットして滑りにくくする
このように、小さな工夫の積み重ねが、関節への負担軽減につながります。
◆ 雨の日でも「室内運動」で筋力キープ
運動不足は、関節の柔軟性や筋力の低下につながるため、日常の中で体を動かすことも大切です。
特に雨が続いて散歩に行けない日には、室内での遊びを積極的に取り入れてあげましょう。
引っ張りっこやボール遊び、コマンド練習など、関節に負担の少ない遊びがおすすめです。
無理なく短時間でも体を動かすだけで、気分転換にもなります。
もともと室内で過ごす時間が長いため、猫じゃらしやトンネルを使った遊びを日課に取り入れて、しっかり体を動かせるよう工夫してあげましょう。
また、飼い主様がやさしく手足を曲げ伸ばしてあげる「ストレッチ」や「屈伸運動」も有効です。具体的な方法は、獣医師やスタッフにご相談ください。
関節トラブルのサインとしては、以下のような変化が見られることがあります。
・動きがゆっくりになる
・段差を避けるようになる
・散歩を嫌がる、すぐに帰りたがる
・寝起きの動きがぎこちない
ただし、犬や猫は本能的に痛みを隠す傾向があり、症状がはっきり現れにくいことも少なくありません。そのため、こうした「少しの違和感」こそが、受診の大切なサインになります。早めにご相談いただくことで、進行を防げるケースもあります。
また、以下のような明らかな症状がある場合は、すぐに動物病院を受診してください。
・足を引きずる
・地面に足をつけずに浮かせている
・抱っこした際に痛がって鳴く
・歩き方がぎこちない
関節トラブルは、一時的な対応で落ち着くものもあれば、長く付き合っていく必要がある慢性のものもあります。
そのため、痛みの緩和だけでなく、関節機能を保ち、進行を抑えるための継続的なケアが欠かせません。
治療法としては、症状に応じてサプリメントの活用や内服薬の処方に加え、温熱療法・超音波治療などの物理療法を組み合わせる場合もあります。
また、飼い主様がご家庭でできる運動療法やマッサージなどのアドバイスも行っております。
「この子にはどんなケアが合うかな?」と迷った際も、どうぞ安心してご相談ください。
梅雨時期は、気圧や湿度の影響で関節に痛みが出やすく、さらに運動不足にもなりがちな季節です。
特にシニア期の子や関節に持病がある子にとっては、体にかかる負担が大きくなりやすいため、少しの違和感にも早めに気づいてあげることが大切です。
ご自宅での環境を整えたり、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけたりすることで、関節トラブルの予防や悪化防止につながります。
また当院では、犬や猫の体の状態に合わせた関節ケアやリハビリのご相談も承っています。「うちの子、ちょっと気になるかも」と感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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