上皮小体は、犬や猫の甲状腺に左右2つずつある小さな臓器で、血中のカルシウム濃度を調節するホルモン(パラソルモン)を分泌しています。
このパラソルモンが過剰に分泌される病気が上皮小体機能亢進症です。
上皮小体機能亢進症は、上皮小体に原因がある原発性と、何らかの原因でカルシウム濃度の調節機能が破綻したことによる二次性があります。
主に犬で起こる病気ですが、猫でも発生します。
上皮小体に原因がある原発性と、上皮小体以外が原因で低カルシウム状態に陥った場合に代償的に生じる二次性(腎性、栄養性)に分けられます。
原発性:上皮小体の腫瘍などによる
二次性(腎性):慢性腎臓病などで高リン血症状態が続くことで起こる慢性的な低カルシウム状態による
二次性(栄養性):カルシウムの不足、リンの過剰摂取、ビタミンD欠乏が起こるような不適切な食生活による
犬の場合は主に上皮小体の腫瘍が原因で、その場合の平均年齢は約11歳と中高齢に多いようです。
初期は無症状で、進行しても特徴的な症状は見られません。
このため、血液検査をした際に高カルシウム血症から偶然見つかることもあります。
高カルシウム血症の症状として、いつもより水を飲む量が増え、尿の回数や量が増えることがあります(多飲多尿)。
また、尿路結石や尿路感染症を伴うと、頻尿や血尿、尿に石が混ざるなどの症状が見られます。
進行すると元気や食欲がなくなり、震え、嘔吐、脱力、まれに皮膚へのカルシウム沈着が見られることもあります。
血液検査で共通してみられる所見は高カルシウムで、腎性の場合はこれに加えて尿素窒素、クレアチニン、リンが上昇します。
診断にはエコー検査がとても有効で、画像によって上皮小体の大きさを確認することができます。
また、高カルシウム血症は心電図検査にも影響します。
ただし、悪性腫瘍やビタミンD過剰症などでも高カルシウムになるため、これらと鑑別する必要があります。
確定診断には、ホルモン検査が必要です。
上皮小体の腫瘍が原因であれば、外科手術をして大きくなった上皮小体を摘出します。
術後に低カルシウム血症を起こすことがあるため、術後の管理は慎重に行います。
二次性の場合は、原因に対する治療を行います。
原発性の上皮小体機能亢進症を予防することはできません。
しかし、定期的な血液検査で健康状態を把握すれば、病気を早期発見することはできるでしょう。
二次性の上皮小体機能亢進症を防ぐためには、バランスの取れた健康的な食生活を心がけましょう。
光が丘動物病院グループ
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<参考文献>
Fernanda C Chacar, Márcia M Kogika, Rafael V A Zafalon, Marcio A Brunetto. Vitamin D Metabolism and Its Role in Mineral and Bone Disorders in Chronic Kidney Disease in Humans, Dogs and Cats. Metabolites. 2020 Dec 4;10(12):499.Edward C Feldman, Bruce Hoar, Rachel Pollard, Richard W Nelson. Pretreatment clinical and laboratory findings in dogs with primary hyperparathyroidism: 210 cases (1987-2004). J Am Vet Med Assoc. 2005 Sep 1;227(5):756-61.