胃捻転は、名前の通り胃がねじれてしまう病気です。
胃内にガスが溜まって拡張する胃拡張と合わせて、胃拡張胃捻転症候群と呼ばれることもあります。
胃捻転を起こした犬や猫では、ガスで拡張した胃が血管を圧迫して循環障害を起こし、非常に危険な状態に陥ります。
対応が遅れると命の危険があるため、おうちの犬や猫で疑わしい症状が見られたら、様子を見ず、すぐに受診してください。
目次
1.原因|ドカ食い後の運動。大型犬は特に注意
2.症状|吐きたいのに吐けない。よだれが多い
3.診断|レントゲンで拡張した胃を確認する
4.治療|緊急手術により胃を元の状態に戻して固定する。状態によってはショック治療を優先
5.予防|大量の食事や水を一気に犬に与えないこと! 疑われる場合は直ちに受診を
捻転は拡張した胃で起こりますが、この原因として有名なのはドカ食い後の激しい運動です。
また、胃に食べたものが長時間留まり続けることや、飲み込みすぎた空気が胃に溜まったり、食べすぎたりした場合も起こると言われています。
犬では、グレートデンや秋田犬、ワイマラナーなど、胸の深い大型犬に発症しやすいとされていますが、小型犬や猫でも発生することがあります。
特徴的な症状は、吐きたそうにしているけれども吐けない、です。
また、よだれが増え、お腹が膨らみ、呼吸困難や虚脱が見られることもあります。
胃捻転では、捻転して通過障害を起こした胃のなかにガスが溜まり、それが血管や他の臓器を圧迫することでショック状態に陥ります。
このため、急激に症状が悪化して死に至ることもある怖い病気です。
「吐きたそうなのに吐けない。よだれが多い」といった疑わしい症状が見られたら、夜間や休日であってもすぐに受診してください。
身体検査や状況から胃捻転が疑われた場合は、レントゲン検査を行います。
胃捻転では、ガスが充満して拡張した胃が確認できます。
また、血液検査や心電図検査、血圧測定などの結果から全身の状態を確認します。
ショック状態に陥っている場合は、まず胃内に充満したガスを抜き、胃の減圧を試みます。
ガスを抜く方法には、経口チューブや皮膚の上から針を指す方法などがあります。
続いて、内科治療による救急処置を行い、ショック症状が落ち着いてから、胃を腹壁に固定する手術を施します。
発症してから死に至るまでがかなり早い病気ですので、治療開始の早さが鍵です。
ある研究では、受診から手術完了までが3時間を超える犬の死亡率は、経過時間が2時間以下の犬の53.3倍であったことが報告されています。
疑われる症状が見られた場合はすぐに連れていらしてください。
※手術中の画像が掲載されておりますので、ご注意ください
胃捻転を予防するには、一度に大量の食事や水を与えないようにすることが大切です。
そのためには、食事の回数を最低でも2回に分けるなど工夫しましょう。
また、原因のひとつと考えられている食事後の激しい運動は避けましょう。
胃捻転は発症から急激に進行して死に至る怖い病気です。
疑われる症状が見られたら、様子を見ずにすぐに受診するようにしましょう。
胃拡張・胃捻転についてはこちらの記事でも詳しく解説しています
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<参考文献>
Song KK, Goldsmid SE, Lee J, Simpson DJ. Retrospective analysis of 736 cases of canine gastric dilatation volvulus. Aust Vet J. 2020 Jun;98(6):232-238.
Piras IS, Perdigones N, Zismann V, Briones N, Facista S, Rivera JL, Rozanski E, London CA, Hendricks WPD. Identification of Genetic Susceptibility Factors Associated with Canine Gastric Dilatation-Volvulus. Genes (Basel). 2020 Nov 5;11(11):1313.