細菌やカビの繁殖が活発になる暑い季節は、食品が痛みやすく、犬や猫でも食中毒のリスクが高まります。
とくに突然の嘔吐や下痢は、食中毒が原因となっているケースも多く、日頃からの対策と早期の対応が大切です。
しかし、犬や猫は人間のように「お腹が痛い」「気持ちが悪い」と言葉で伝えることができないため、症状に早く気づくには飼い主様のちょっとした気づきが欠かせません。
そこで今回は、犬や猫に起こる食中毒の原因から、ご家庭での予防の工夫、受診の目安についてご紹介します。
■目次
食中毒とは、細菌やカビ、ウイルス、毒物などを含む食べ物を食べることで起こる体調不良のことです。
食中毒の原因菌としては、サルモネラ菌・クロストリジウム・カンピロバクター・大腸菌などが挙げられます。
こうした細菌は、落ちている食べ物や腐敗したフード、傷んだおやつ、ゴミ箱の中身などを犬や猫が誤って食べてしまうことで感染することが多くあります。
▼犬と猫の誤飲誤食についてはこちらで解説しています
主な症状は以下のようなものがあり、急に現れることもあります。
・嘔吐
・下痢
・発熱
・食欲不振
・元気がなくなる
・口臭やお腹の張り(場合によっては)
とくに夏場は、細菌やカビが高温多湿な環境で急速に繁殖するため、食中毒のリスクが一気に高まります。
たとえば、エアコンを使わずに締め切った室内では気温が30〜35℃以上になることもあり、フードやおやつの劣化が早まります。
また、子犬・子猫や高齢の子、持病のある子は免疫力が弱く、わずかな細菌でも重症化しやすいため注意が必要です。
夏はバーベキューやピクニックなど、犬と一緒に屋外で過ごす機会が増える季節です。その一方で、食中毒や誤食の事故が起こりやすくなる場面でもあります。
たとえば、以下のようなケースが見られます。
・飼い主様が目を離したすきに、落ちた食べ物を拾い食いしてしまう
・ご家族や友人がついおすそ分けしてしまい、犬や猫には有害な食材を口にしてしまう
・ゴミ袋の中の残り物を誤って食べてしまう
特にバーベキューやお弁当でよく使われる食材には、以下のような犬や猫にとって危険なものが多く含まれています。
・玉ねぎ・ニンニク:中毒を起こすことがあります
・チョコレート・ココア:少量でも危険です
・ぶどう・レーズン:腎臓に悪影響を及ぼすことがあります
・脂っこい肉・ソーセージ・チーズ・生クリーム:胃腸に負担がかかります
・骨付き肉の骨片:口や腸を傷つけるおそれがあります
また、屋外では落ちているものを素早く口に入れてしまうこともあり、何をどれだけ食べたのか把握できないまま、後から体調を崩すこともあります。
・犬と一緒に過ごす場では、地面に食材を落とさないよう注意する
・食事中はリードを短めに持つ、またはクレートで待機させる
・周囲の人に「犬に食べ物を与えないよう」事前に伝えておく
・落ちたものを拾い食いしないよう、日頃からしつけをしておく
「少しだけなら大丈夫」と思ってしまうことが、思わぬ体調不良につながることもあります。
楽しい時間を安全に過ごすためにも、屋外での食事中はとくに気をつけましょう。
▼キャンプやバーベキューに愛犬を連れていく際の注意点についてはこちらで解説しています
日常のちょっとした配慮が、食中毒の予防に大きくつながります。以下のような対策を意識してみましょう。
◆フードの保存・管理を見直す
直射日光の当たらない涼しい場所で保管し、できれば1ヶ月以内に使い切れる量を購入しましょう。開封後は密閉容器に移し替えることも大切です。
また、ウェットフードや手作りフードは、開封後は必ず冷蔵庫で保管し、なるべく早めに使い切るようにしてください。
見た目やにおいが問題なくても、目に見えない菌が繁殖していることもあるため、残った食事は迷わず処分しましょう。
◆手作りフードは必ず加熱を
新鮮な食材を使っていても、生肉や生魚には細菌や寄生虫が付着している可能性があります。
「生のほうが好きそうだから」と思っても、しっかり加熱してから与えるようにしましょう。そのほうが安全で、消化にもやさしい食事になります。
◆誤食を防ぐ環境を整える
ゴミ箱はふた付きのものを使い、食べ残しや調理中に出た野菜の切れ端などもすぐに片づけるように心がけましょう。
また、キッチンやダイニングへの立ち入りを制限するために、ペットゲートを活用するのも効果的です。
◆食器や水皿は毎日洗う
夏場は特に、水皿や食器にぬめり(バイオフィルム)が発生しやすくなります。
水やフードを交換するだけでなく、毎日洗剤を使って洗うようにしましょう。
犬や猫に嘔吐や下痢が見られた場合、たとえ軽度でも自己判断で様子を見るのは危険です。
なぜなら、似たような症状であっても、以下のような重大な病気が隠れていることがあるからです。
・急性膵炎:早期治療が必要な内臓疾患
・異物誤飲による腸閉塞:緊急手術が必要になるケースも
▼犬の膵炎についてはこちらで解説しています
▼猫の膵炎についてはこちらで解説しています
▼犬と猫の腸閉塞についてはこちらで解説しています
また、症状が軽く見えても、下痢や嘔吐が続くことで脱水や電解質異常を引き起こし、命に関わる可能性もあります。
さらに、「以前もらった薬があるから」と自己判断で与えるのは非常に危険です。そのときの体調や原因が異なれば、むしろ症状を悪化させるリスクがあります。
どんなときも、「いつもと違う」と感じたら、すぐに動物病院に相談してください。
食中毒は、ふだんの生活の中でも起こりうる身近なトラブルです。
だからこそ、フードの管理や与え方、ちょっとした異変への気づきが、とても大切になってきます。
「たまたまかな?」と思えるような嘔吐や下痢でも、その陰に重大な病気が潜んでいることもあります。
心配な症状が続くときは、「念のため」でも構いません。どうか遠慮なくご相談ください。
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