「散歩中に急に足を浮かせるようになった」
「朝起きたときだけ足を引きずっている」
「歩き方がおかしいけれど、少し様子を見てもよいのかな?」
愛犬が足を引きずっていると、心配になる飼い主様も多いのではないでしょうか。
犬が足を引きずったり、左右で異なる歩き方をしたりする状態は、医学的には「跛行(はこう)」と呼ばれます。跛行は、足先の小さな傷から関節や骨の病気、神経の異常まで、さまざまな原因で起こります。
短時間で普段どおりの歩き方に戻ることもありますが、足を地面につけられない、強く痛がる、症状を繰り返すといった場合は、骨や関節、靱帯、神経などに異常が隠れている可能性があります。
今回は、犬が足を引きずるときに考えられる原因や受診の目安、ご自宅でできる対応について解説します。

■目次
愛犬が足を引きずっているときは、無理に足を曲げ伸ばししたり、痛そうな場所を強く押したりせず、見える範囲で様子を確認しましょう。
特に確認しておきたいのは、次のような点です。
・いつ、どのような場面から始まったか
・どの足をかばっているように見えるか
・足を地面につけて歩けるか
・元気や食欲など、全身状態に変化がないか
歩き方が変わった前後に、転倒や飛び降り、激しい運動などの心当たりがないかも振り返ってみてください。
跛行が見られたときに、「すぐ動物病院へ行くべきか」「少し様子を見てもよいのか」と迷うこともあるでしょう。
受診の緊急性は、症状が続いている時間だけでなく、足に体重をかけられるか、痛みの程度、元気や食欲など全身の状態も含めて判断することが大切です。
次のような症状が見られる場合は、骨折や脱臼、靱帯の損傷、神経の異常などが隠れている可能性があります。
・足をまったく地面につけられない
・強く痛がって鳴く
・足が不自然な方向に曲がっている
・強い腫れや出血がある
・後ろ足が急に動かなくなった
・ふらつく、足がもつれる、立ち上がれない
・交通事故や高い場所からの落下後に歩き方がおかしくなった
・元気や食欲が落ちている
・呼吸が荒い、ぐったりしている
無理に歩かせたり立たせたりせず、早めに動物病院へご相談ください。
歩くことはできていても、足を引きずる症状を繰り返したり、日常の動作に変化が見られたりする場合は、一度状態を確認することをおすすめします。
次のような変化が続いていないか確認しましょう。
・同じ足を繰り返し引きずっている
・散歩に行きたがらなくなった
・段差や階段を避けるようになった
・ソファやベッドに上がらなくなった
・同じ足を何日も気にしている
・一度よくなったあとに再び足を引きずる
歩けているように見えても、関節や靱帯の病気が少しずつ進行していることがあります。
症状が続く場合や繰り返す場合は、自己判断で様子を見続けず、一度原因を確認することが大切です。
散歩中に小石を踏んだり、軽く足をぶつけたりした直後は、一時的に足を浮かせることがあります。
原因に心当たりがあり、足裏に明らかな傷や異物が見当たらず、すぐに普段どおり歩けるようになった場合は、運動を控えながら慎重に様子を見ることもできます。
ただし、足を引きずる、症状が悪化する、触らなくても痛そうにしている、元気や食欲が落ちるなどの変化が見られた場合は、早めに動物病院へご相談ください。
犬が足を引きずる原因は、関節や骨の病気だけではありません。神経の異常や足先の傷、皮膚のトラブルなど、さまざまな原因が考えられます。
原因によって必要な検査や治療が異なるため、どこに問題があるのかを見極めることが大切です。
◼︎関節や骨のトラブル
犬が足を引きずる原因として、関節や骨の異常は比較的よく見られます。
代表的な病気には、次のようなものがあります。
・膝のお皿が正常な位置からずれる膝蓋骨脱臼
・膝を支える靱帯が傷つく前十字靱帯損傷
・股関節が外れる股関節脱臼
・関節に炎症や変形が起こる関節炎
・転倒や事故などによる骨折
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小型犬では膝蓋骨脱臼が比較的多く、大型犬では股関節の病気や前十字靱帯損傷などに注意が必要です。ただし、いずれの病気も犬種や体格を問わず起こる可能性があります。
◼︎神経のトラブル
足そのものではなく、脳や脊髄、手足につながる神経の異常によって、足を引きずることもあります。
代表的な病気の一つが椎間板ヘルニアです。背骨の間でクッションの役割をしている椎間板が飛び出し、神経を圧迫することで、痛みや歩き方の異常が表れます。
神経の病気では、強い痛みが目立たないまま症状が進むこともあります。「足をかばっているだけ」と判断せず、歩き方そのものに異変がある場合は、早めに動物病院へご相談ください。
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◼︎足先や皮膚のトラブル
足裏や爪、指の間に痛みや違和感があると、患部をかばって足を引きずることがあります。
確認したい足先の異常には、次のようなものがあります。
・爪が折れている
・肉球に傷ややけどがある
・小石や植物の種などが挟まっている
・指の間が赤く腫れている
・足先を何度もなめている
足裏は見える範囲で確認できますが、嫌がる犬を無理に押さえたり、深く刺さった異物を引き抜いたりしないようにしましょう。
また、足先を頻繁になめている場合は、痛みだけでなく、皮膚炎やかゆみが関係していることもあります。
◼︎筋肉や腱の負傷
走ったりジャンプしたりしたあとに、筋肉や腱を傷めて足を引きずることもあります。
軽い負傷では、少し休むと普段どおり歩けるようになる場合もあります。しかし、跛行を繰り返す場合や、運動後に毎回症状が出る場合は、筋肉以外の異常が隠れていないか確認が必要です。
また、自己判断でマッサージやストレッチを行うと、傷めた部分にさらに負担をかける可能性があるため、無理に動かさないようにしましょう。
◼︎腫瘍や感染などによる異常
骨や関節に腫瘍や感染症、強い炎症などが起こり足を引きずることもあります。
このような病気では、症状が急に表れる場合だけでなく、少しずつ足をかばうようになったり、患部の腫れが目立ってきたりすることがあります。
安静にしても改善しない、徐々に症状が悪化している、腫れが大きくなっているといった場合は、早めに動物病院で状態を確認しましょう。
犬が足を引きずっているときは、原因がはっきりするまでは、無理に運動させないことが大切です。
受診までの間は、次のような対応を心がけましょう。
・散歩や激しい運動を控える
・ジャンプや階段の上り下りを避ける
・滑りやすい床にマットを敷く
・足裏を見える範囲で確認する
・歩き方を動画で撮影する
・症状が始まった時間やきっかけを記録する
動物病院では、緊張して普段どおりの歩き方ができない犬もいます。ご自宅で歩いている様子を動画で撮影しておくと、どの足をかばっているのか、どのような歩き方をしているのかを確認する手がかりになります。
一方で、症状を悪化させるおそれがあるため、次のような対応は避けましょう。
・痛がる場所を何度も触る
・足を無理に曲げ伸ばしする
・歩けるか確認するために何度も立たせる
・自己判断でマッサージやストレッチを行う
・人用の痛み止めを飲ませる
人用の薬には、犬にとって有害な成分が含まれているものもあります。薬が必要な場合は、自己判断で与えず、必ず獣医師の診察を受けましょう。
動物病院では、まず歩き方や姿勢、足の着き方を確認します。その後、関節の動きや筋肉の状態、痛みが出る場所などを確認する整形外科的検査を行い、足のどの部分に問題があるのかを調べます。
神経の異常が疑われる場合は、反射が正常に起こるか、体を支える力が保たれているかなどを確認する神経学的検査も行います。
診察結果をもとに、必要に応じて次のような検査を組み合わせながら、原因を詳しく調べます。
・骨や関節の状態を確認するレントゲン検査
・筋肉や腱などの軟部組織を確認する超音波検査
・炎症の有無や全身状態を調べる血液検査
・骨や脊椎の構造を詳しく調べるCT検査
・脊髄や神経、軟部組織を詳しく調べるMRI検査
原因が分かったあとは、その子の状態に合わせて治療方針を決定します。安静や痛みを和らげる薬などの内科治療で改善が期待できる場合もあれば、骨折や脱臼、靱帯断裂、重度の椎間板ヘルニアなどでは、手術や術後のリハビリが必要になることもあります。
当院では、歩き方や痛みの状態を丁寧に確認したうえで、必要に応じて複数の獣医師で情報を共有しながら、検査や治療方針を検討しています。
犬が足を引きずる原因は、足裏の傷や軽い負傷だけでなく、関節や骨、靱帯、神経の病気、腫瘍や感染症などさまざまです。
足をまったく地面につけられない、強く痛がる、ふらつく、立てないといった症状が見られる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。また、軽い症状に見えても、足を引きずる症状を繰り返したり、段差を避ける、散歩を嫌がるなどの変化が続いたりする場合は、一度原因を確認することが大切です。
「今すぐ受診した方がよいのか分からない」と迷われた場合も、お気軽にご相談ください。愛犬の歩き方に気になる変化がありましたら、当院までお電話にてお問い合わせください。
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最終更新:2026年8月