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犬と猫を蚊媒介感染症から守るには?|フィラリア・デング熱などのリスクと予防対策を解説

2025.05.16
犬の話猫の話

犬の飼い主様にとって「蚊」といえば、まずフィラリア症(犬糸状虫症)を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は蚊はフィラリア以外にもさまざまな感染症を媒介することがあります。

近年では、海外旅行やペットの輸入が増加していることにより、国内でも海外由来の病気への注意が必要になってきています。

さらに、フィラリアは「犬の病気」というイメージが強いかもしれませんが、猫にも感染することがあります。
しかも、完全室内飼育の猫であっても、蚊に刺される可能性はゼロではありません。

今回は、犬や猫に影響を及ぼす蚊媒介感染症の代表例やそのリスク、予防のためにできる対策や予防薬の選び方について解説します。

■目次

 

蚊が媒介する代表的な感染症とそのリスク


犬や猫にとって、蚊が媒介する代表的な感染症といえば、フィラリア症(犬糸状虫症)です。
この病気は、蚊に刺された際にフィラリアの幼虫が体内に侵入し、肺や心臓の血管に寄生して発症します。

犬の場合、成虫になったフィラリアは肺動脈に寄生し、肺高血圧症や右心不全を引き起こす原因となります。
猫では、肺の炎症や血栓塞栓症などを起こすことがあり、突然死につながるケースも報告されています特に猫は、犬よりも体内に入るフィラリアの数が少ないことが多く、症状もわかりにくいため、診断が難しいという特徴があります。

フィラリア症は、幼虫の段階であれば予防薬の投与によって発症を防ぐことができますが、成虫になってからでは治療が難しくなります
さらに、初期はほとんど無症状で進行するため、日常生活の中で気づくのは簡単ではありません。

 

人への感染症にも注意


蚊が媒介する感染症は、犬や猫だけでなく人にも影響を及ぼす可能性があることをご存じでしょうか。
近年、日本でも話題になったデング熱をはじめ、ウエストナイル熱、黄熱、ジカウイルス感染症、日本脳炎、マラリアなどが知られています。

このうち、日本脳炎は国内でも発生があり、予防のためにワクチンが広く使われています。(現在、日本では集団予防接種の一環として定期的に接種されています。)

それ以外の感染症は主に海外からの輸入感染症として知られていますが、海外旅行の増加や輸入ペットの影響により、国内でも注意が必要です。

これらの病気は、蚊に刺されたからといって必ず感染するわけではありませんが、刺されることで感染のリスクは確実に高まります。

犬や猫、そして人の健康を守るためにも、日頃から「蚊に刺されないための対策」を意識することが大切です。

 

蚊の侵入・発生を防ぐための環境対策


「うちの犬(猫)は外に出ないから、蚊に刺される心配はない」とお考えの飼い主様もいらっしゃるかもしれません。

しかし、外に出ない犬や猫はいても、まったく外に出ない飼い主様はいません。
人の出入りや玄関・窓の開閉の際に、蚊は簡単に家の中へ侵入してきます。
そのため、完全室内飼いであっても、蚊対策はとても重要です。

家の中に蚊を入れないためのポイント
・網戸をしっかり閉める、破れがないか定期的に確認する
・網戸用の虫よけ剤や蚊よけスプレーを併用する
・蚊取り線香や電子蚊取り、ワンプッシュ式スプレーなどを使用する場合は、犬や猫への安全性を確認してから使う

 

蚊の発生源を減らす工夫
蚊は水のある場所で繁殖するため、以下のような場所に注意しましょう

・ベランダや庭にある植木鉢の受け皿、バケツ、ジョウロなどに水がたまっていないかチェックする
・雨水がたまった場所はこまめに捨てて乾燥させる

 

散歩時の注意
蚊は、夕方から夜にかけて活発に活動します。
そのため、蚊が多い季節はこの時間帯の散歩を避ける、または虫よけ対策をしてから外出するようにしましょう。

飼い主様が行う蚊対策は、ご自身と愛犬・愛猫の健康を守る大切な習慣です。
特に蚊の多い時期には住環境を見直しながら、できることからしっかりと対策をしていきましょう。

 

愛犬・愛猫を蚊媒介感染症から守るために


いくら環境を整えても、蚊にまったく刺されないようにするのは現実的には難しいものです。
特にフィラリア症は予防薬によって確実に防ぐことができる感染症のため、毎年の予防がとても大切です。

フィラリア症の予防薬は、蚊に刺されてフィラリアの幼虫が体内に入ってしまった場合でも成虫になる前に駆除できるお薬ですので、症状が出る前にしっかりと予防をしておくことが何より重要です。

犬のフィラリア予防薬には、飼い主様のライフスタイルや犬の性格に合わせて選べるよう、さまざまなタイプがあります。

・錠剤タイプ
・おやつ感覚で与えられるチュアブルタイプ
・首の後ろに垂らすスポットタイプ
・年に1回の注射タイプ(※動物病院で実施)

予防薬は体重によって適切な量が異なりますので、必ず獣医師の指導のもとで投薬を行ってください

猫も同様に、完全に室内で暮らしていても蚊に刺される可能性はあります
フィラリア症は猫でも命に関わる病気となるため、猫にも予防薬の投与をおすすめしています。

猫用のフィラリア予防薬も、内服タイプやスポットタイプ(首に垂らすタイプ)などがあり、愛猫の性格や体調に合わせて選ぶことができます。
どの予防薬が合っているか迷われた場合は、お気軽に獣医師までご相談ください。

 

まとめ|感染症から守るには、蚊を寄せつけず予防を続けることが大切


蚊が媒介する感染症から愛犬・愛猫を守るために最も大切なのは、正しい知識と予防への意識を持つことです。
室内飼育や都会での暮らしであっても、蚊に刺されるリスクはゼロではありませんので、「うちは大丈夫」と油断せず、毎年しっかりと予防を継続することが大切です。

なお、住んでいる地域や動物の体質・生活スタイルによって、適した予防法は異なる場合もあります。
具体的な予防については、かかりつけの動物病院でご相談のうえ、その子に合った方法を選ぶようにしましょう。

現在、フィラリア予防に関するキャンペーンを実施しております。
予防を始めるタイミングや、お薬の種類についてのご相談も承っておりますので、どうぞお気軽にご来院ください。

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<参考文献>
American Heartworm Society(2018)「2018 AHS Canine Guidelines」https://heartwormsociety.org/images/pdf/2018-AHS-Canine-Guidelines.pdf (2025年5月9日閲覧)

 
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