「最近ごはんを残すことが増えた」「暑くなってから、食いつきが悪い気がする」そんな愛犬・愛猫の変化に気づき、不安を感じている飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
夏は、人間と同じように犬や猫にとっても暑さが大きなストレスになります。その影響で、食欲が落ちてしまうことも少なくありません。とはいえ、こうした“食欲不振”が単なる夏バテなのか、それとも何らかの病気のサインなのかを見極めることがとても大切です。
特に猫の場合、「数日間まったく食べない」といった状態が続くと、肝リピドーシス(脂肪肝)など、命に関わる深刻な病気へと進行する恐れもあります。
そこで今回は、夏に食欲が落ちる理由や注意したい症状、自宅でできる対策、快適な生活環境の整え方について詳しく解説します。
■目次
犬や猫が夏に食欲を落としやすくなるのには、いくつかの要因が重なっています。
◆ 暑さによる代謝の低下
気温が高くなると、体は余分なエネルギーを使わず体温の上昇を防ごうとします。その結果、代謝が下がり、自然と食欲も落ちてしまいます。これがいわゆる“夏バテ”による食欲不振の正体です。
◆ 胃腸の働きが低下する
暑さによって自律神経が乱れると、胃腸の動きにも影響が出てしまいます。「においを嗅ぐだけで食べない」「途中で食べるのをやめてしまう」などの様子が見られる場合は、消化力が落ちているサインかもしれません。
◆ 水分の摂りすぎによる満腹感
夏は脱水予防のために水を多く飲むことが重要ですが、水分ばかりを摂ると一時的に満腹感が生じ、ごはんを受け付けなくなることがあります。
▼水中毒についてはこちらで解説しています
◆ 湿度・室温・環境ストレスも影響
高温だけでなく、湿度の高さも食欲に関わります。湿度が高いと体に熱がこもりやすくなり、だるさや不快感が増してしまいます。また、空気のこもった部屋、落ち着かない場所、ごはんの置き場所が暑すぎるなどの環境も、食欲を下げる原因となります。
◆ ストレスによる影響
来客、騒音、家族の生活リズムの変化など、些細なことでも犬や猫はストレスを感じます。ストレスが続くと、食欲だけでなく排せつや睡眠など、日常の行動にも影響が出てくることがあります。
「暑いから仕方ないかな…」と見過ごしてしまいがちですが、以下のような症状がある場合は注意が必要です。
・1日以上、まったくごはんを食べない
・元気がなく、ぐったりしている
・嘔吐や下痢を繰り返している
・水も飲まない
・お腹を丸める、鳴くなど、痛みを示す行動がある
特に猫の場合は「絶食」に弱く、2〜3日食べないと「肝リピドーシス(脂肪肝)」という命に関わる病気を引き起こすことがあります。
「様子を見ても大丈夫なケース」と「すぐに受診すべきケース」の判断がつかない場合は、早めにご相談ください。
▼猫の肝リピドーシスについてはこちらで解説しています
軽度の食欲低下であれば、次のような工夫で改善が期待できることもあります。
・フードを少し温める
香りが立ちやすくなり、食欲を刺激します。電子レンジで5〜10秒温めるのが目安です(熱すぎには注意)
・食器の高さや素材を工夫する
食器の高さや素材を変えることで食べやすくなる子もいます。特にシニアの子には首や関節への負担を減らせるよう、やや高めの食器がおすすめです。
・食事の場所を見直す
直射日光が当たる場所や、人の出入りが激しい場所は避け、静かで涼しい環境で食べられるようにしましょう。
・味や食感に変化をつける
ドライフードにウェットフードを少量混ぜたり、茹でたササミの煮汁をかけたりすると、香りが増して食いつきが良くなることがあります。
ただし、急なフードの切り替えは下痢や嘔吐の原因になることがあるため、あくまで「いつもの食事」にひと工夫する形がおすすめです。
夏の暑さは、犬や猫の体に大きな負担をかけ、食欲にも影響します。そのため、まずは快適に過ごせる環境を整えることが大切です。室温は20〜25℃前後、湿度は40〜60%が目安で、エアコンだけでなく除湿機やサーキュレーターも併用するとより効果的です。
くつろぎスペースも大切です。直射日光が当たる場所や風通しの悪い場所は避け、冷感マットなどを活用して、涼しく休める場所を用意してあげましょう。
また、体力の消耗を防ぐため、日中の激しい運動は控え、朝晩の涼しい時間帯に遊ぶようにしましょう。
▼夏の室内環境についてはこちらで解説しています
「元気がない」「何日も食べない」「水も飲まない」といった症状がある場合、動物病院での診察が必要です。
当院では以下のような診療を行っています。
・脱水・栄養状態のチェック
血液検査などを通じて、脱水の有無や内臓の働きに異常がないかを確認します。
・点滴やお薬での治療
脱水がある場合は点滴を行い、胃腸の働きを助けるお薬を使うこともあります。
・生活やフードのご相談も可能です
ご家庭でできる食事の工夫や、体質に合ったフードの選び方についても、遠慮なくご相談ください。
夏に犬や猫の食欲が落ちることは珍しくありませんが、「いつもと様子が違うな」と感じたときは、早めの対応が大切です。特に、まったく食べない、水を飲まない、元気がない、嘔吐や下痢が続くといった場合には、すぐに動物病院へご相談ください。
一方で、軽い食欲低下であれば、自宅での工夫や快適な生活環境づくりで改善できることもあります。
大切なのは、「ただの夏バテ」と油断せず、日々のちょっとした変化にも気づいてあげることです。光が丘動物病院では、食欲不振をはじめとした小さな不調から、病気の可能性まで幅広くサポートしています。
「これって病院に相談してもいいのかな?」というような些細なご心配も、どうぞお気軽にご相談ください。
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