最近では、犬や猫に食物アレルギーが見られるケースが増えてきています。
特に、原因がわからない下痢や嘔吐、皮膚のかゆみなどが続いている場合、その背景に食物アレルギーが隠れていることも少なくありません。
食物アレルギーとは、本来であれば身体に害のない特定の食べ物に対して、免疫が過剰に反応してしまうことで起こる病気です。
このような過敏な反応により、愛犬や愛猫にさまざまな体調不良が現れることがあります。
今回は、犬や猫の食物アレルギーについて、原因や症状、治療法までを解説します。
■目次
体にはウイルスや細菌といった有害な外敵から身を守る「免疫システム」が備わっています。
しかしこの免疫が、本来であれば害のないものにまで過剰に反応してしまうことがあります。これを「アレルギー(過敏症)」と呼びます。
春先によく見られる花粉症もその一つで、体が花粉を「異物」と判断し、涙や鼻水、くしゃみといった症状を引き起こします。
そして、食物アレルギーも同じようにアレルギー反応の一種です。
これは特定の食材を食べたときに体の免疫システムがそれを異物とみなし、下痢や嘔吐といった消化器の不調や、皮膚のかゆみ・赤みなど、さまざまな症状を引き起こします。
なお、アレルギーは体質に深く関わっているため、完全に治すことは難しいといわれていますが、原因となる食材(アレルゲン)を正しく把握し、避けることで症状をコントロールすることができます。
犬や猫でよく見られるアレルゲンには、小麦・乳製品・牛肉などがあります。
アレルギーは最初の一口で症状が出る場合もあれば、何年も食べ続けてから突然現れることもあるため、日頃からの観察がとても大切です。
犬や猫に見られる食物アレルギーの症状で、もっとも多いのは「皮膚のかゆみ」です。そのほかにも、嘔吐や下痢といった消化器のトラブルが見られることもあります。
<皮膚に現れる症状>
皮膚のかゆみは、ただ痒がるだけではなく「体をしきりに舐める」「後ろ足で掻く」「床や壁に顔や体をこすりつける」などの行動として現れます。
また、皮膚のトラブルがなかなか治まらない場合や、治療の効果が見られにくい場合には、その原因に食物アレルギーが関係している可能性も考えられます。
「治療してもすぐに再発する」「赤みやかゆみが長引いている」
そんな症状が続くときは、一度アレルギーの疑いも視野に入れてみるとよいかもしれません。
<消化器に現れる症状>
さらに、嘔吐や下痢などの消化器の症状が見られることもあります。
症状の出方はさまざまで、「ひどい下痢」まで至らない場合でも、やわらかい便が続くといった軽い変化もアレルギーのサインであることがあります。
犬や猫に食物アレルギーが疑われる場合には、アレルギー検査・除去食試験・負荷試験といった方法を用いて診断を進めていきます。
ただし、アレルギーとよく似た症状を示す病気も多いため、血液検査や皮膚の検査、超音波検査などを併せて行い、ほかの病気の可能性がないかを調べることも重要です。
◆アレルギー検査
アレルギー検査は、血液を採取して検査機関に送ることで、どのようなアレルゲンに反応しているかを調べます。
この検査は、除去食試験で使用するフードを選ぶ際の参考にもなります。
なお、アレルギー検査は実際に症状が出ているときに行うことで、検査結果と症状の関連性がより高くなるといわれています。
そのため、除去食試験を始める前に受けることが推奨されています。
◆除去食試験(食事による反応の確認)
除去食試験では、アレルギーの原因と疑われる食材を含まないフードを4〜8週間与え、症状の変化を見ていきます。
もしフードを切り替えてから症状が改善した場合は、以前のフードに含まれていた食材の中に、アレルギーの原因となるものが含まれていた可能性が高いと考えられます。
・消化器の症状(下痢・嘔吐など)は、通常1〜2週間ほどで改善が見られます
・皮膚の症状(かゆみ・赤みなど)は、4〜8週間かかるとされています
この試験の期間中は、飼い主様に毎日の食事内容や症状の様子を記録していただくことが大切です。
少し時間のかかる方法ではありますが、獣医師と相談しながら根気よく取り組むことが、正確な診断への近道になります。
◆負荷試験(原因食材の特定)
除去食試験でアレルギーの原因として疑われる食材がある程度絞られた場合、次に行うのが「負荷試験」です。
負荷試験では、疑わしい食材を1種類ずつ与え、症状が再発するかどうかを確認します。
この試験によって、どの食材がアレルゲンなのかをより明確に特定することができます。
犬や猫の食物アレルギーの治療では、「食事の管理」と「症状への治療」の両方が基本となります。
まずは、アレルギー検査や除去食試験、負荷試験を通してアレルゲン(原因となる食材)を特定し、その食材を含まないフードに切り替えていきます。
<食事管理のポイント>
アレルゲンを避けるためには、原材料をしっかり確認することがとても大切です。
選択肢としては、以下のようなものがあります。
・獣医師の処方が必要な「療法食」
・市販されている「低アレルゲンフード」
いずれを選ぶ場合でも、アレルゲンとなる食材が含まれていないかをよく確認するようにしましょう。
また、原材料から食事を手作りする場合は、栄養バランスが偏りやすくなるため、必ず事前に獣医師にご相談ください。
<食事管理で気をつけたいこと>
食物アレルギーの治療では、アレルゲンを一切口にしないよう、徹底した管理が重要です。
たとえば同じ家に犬や猫が複数いる場合は、食事の場所を分けるなどの工夫が必要になります。
うっかり他のフードを食べてしまうと、症状が再び悪化してしまう可能性があります。
すでに皮膚のかゆみや消化器の不調などの症状が出ている場合は、症状をやわらげるための治療も並行して行います。
皮膚のかゆみを放置すると、掻き壊しや出血、皮膚病の悪化につながることがありますので、早めの対応が大切です。
もし食事管理だけでは症状を抑えきれない場合は、薬やサプリメントの使用が検討されます。
ただし、治療中に「元気そうだから」と自己判断で投薬を中断してしまうと、かえって症状が悪化するおそれもありますので、必ず獣医師と相談しながら治療を進めましょう。
また、皮膚の状態を整えるために、薬用シャンプーを使った薬浴や、保湿剤によるスキンケアも効果的です。
こうしたケアも併せて行うことで、皮膚のコンディションを良好に保つことができます。
食物アレルギーは完治が難しい病気ではありますが、正しい知識と適切な管理を続けることで、症状をうまくコントロールしながら快適な毎日を送ることができます。
そのためには、日々のちょっとした変化に気づくことが大切です。
皮膚のかゆみや、下痢・嘔吐などの症状が見られたときは「少し様子を見よう」と判断せず、できるだけ早めに獣医師にご相談ください。
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