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人に感染する可能性があるって本当?|犬と猫の皮膚糸状菌症完全ガイド

2025.04.18
犬の病気猫の病気

愛犬や愛猫の皮膚に赤みやかさぶたのような変化が見られたら、もしかすると「皮膚糸状菌症」かもしれません。
皮膚糸状菌症とは、真菌(カビの一種)によって起こる皮膚の感染症です。犬や猫によく見られる病気のひとつで、かゆみや脱毛などの症状が見られることがあります。

さらに気をつけたいのは、この病気が人にも感染することがあるという点です。そのため、早期に異変に気づき、適切な対応をすることがとても大切になります。

今回は、皮膚糸状菌症の原因や特徴、人への感染のリスク、診断方法や治療について解説します。

■目次

 

皮膚糸状菌症とは?|原因と特徴


皮膚糸状菌症は、カビの一種である「真菌」が皮膚に感染して起こる、感染性の皮膚病です。
原因となる真菌には、Microsporum(ミクロスポルム)属やTrichophyton(トリコフィトン)属などがあり、これらは感染している犬や猫の毛やフケ、または汚染された環境との接触によって広がっていきます。

さらに注意が必要なのは、皮膚糸状菌は環境中で非常に長く生き残る力を持っているという点です。条件が整えば、1年以上も感染力を保ったまま存在することもあるとされています。

本来、犬や猫の皮膚にはバリア機能があり、真菌が毛に付着してもすぐに症状が出るとは限りません。しかし、免疫力が落ちていると毛に残っていた菌が活動をはじめ、皮膚糸状菌症を発症してしまうことがあります。
特に、以下のような犬や猫では注意が必要です。

・免疫機能がまだ発達していない子犬や子猫
・加齢により免疫が低下している高齢犬や高齢猫
基礎疾患ホルモンの病気を抱えている場合

また、症状が現れていなくても犬や猫が皮膚糸状菌を保菌している場合、他の動物や人へ感染が広がる可能性があります。野良猫との接触が感染源となることもあるため、猫は完全室内飼いにするのが安心です。

さらに、ハムスターやウサギなどの小動物が無症状で菌を持っているケースもあると報告されています。

 

人への感染リスク


皮膚糸状菌症は、人にも感染する「人獣共通感染症」です。飼い主様が感染すると、かゆみを伴う円形の赤い発疹(紅斑)が現れることがあります。特に、小さなお子様や高齢の方、持病をお持ちの方では、感染リスクが高まるため、愛犬・愛猫に異変があった場合は早めに対処することが大切です。

 

主な症状


皮膚糸状菌症になると、円形に毛が抜けてしまう脱毛や、その周囲にフケが出るかゆみを感じるといった症状が見られます。症状は耳や目の周り鼻先や口元などの顔周りに現れやすく、その後は手足やしっぽといった体のほかの部分にも広がっていきます。

ただし、他の皮膚病と比べるとかゆみがそれほど強くない場合も多く、犬や猫があまり気にしていないように見えることもあります。症状が出ていることに気づきにくく、発見が遅れてしまうこともあります。

また、円形の脱毛やフケなどの症状が見られたからといって、必ずしも皮膚糸状菌症とは限りません。似たような症状を引き起こす皮膚の病気はほかにも多数あり、それぞれ治療の方法も異なります。
そのため、少しでも気になる症状が見られたときには、自己判断せずに動物病院で診断を受けることが大切です。

▼脱毛についてはこちら

 

 

診断方法


動物病院では以下の方法で皮膚糸状菌症かどうかを調べます。

ウッド灯検査
毛に特殊なライト(紫外線)を当て発光するかを確認する検査です。
皮膚糸状菌の中でも「Microsporum canis(ミクロスポルム カニス)」が原因の場合は、毛が黄緑色に光ることがあります。
ただし、他の種類の真菌が原因の場合は反応が出ないため、この検査だけでは診断がつかないこともあります。

被毛検査
症状が出ている部分の毛を数本抜き、顕微鏡でカビが付着しているかどうかを確認します。真菌感染の有無はわかりますが、どの種類のカビかまでは特定できません

培養検査
感染が疑われる毛を外部の検査機関に送り、培養して真菌の種類を詳しく調べる検査です。補助的な位置づけの検査のため、症例によっては実施しない場合もあります。

より正確な診断のために、病院で以下の情報を伝えていただけると、とても役立ちます。

・症状がいつから、どのように現れたか
・他の犬や猫との接触歴
・ノミやダニの予防状況
・家の中でハムスターやウサギなど他の動物を飼っているか

また、皮膚糸状菌症を発症している犬や猫は、皮膚のバリア機能や免疫力が低下している可能性もあります。そのため、必要に応じて血液検査などの健康チェックを行うこともあります。

 

治療法


皮膚糸状菌症の治療は、症状の広がり具合や重症度によって方法が異なります。

<局所的な症状の場合>
症状が一部にとどまっているときは、その部分の毛を刈ったうえで、薬用シャンプーや外用薬による治療が行われます。皮膚に直接薬を塗ることで、患部の菌を減らしていきます。

ただし、塗った薬を愛犬や愛猫が舐めてしまうこともあるため、必要に応じてエリザベスカラーの着用や洋服を着せるなどの対策を行うことがあります。

<症状が広範囲、または重症の場合>
皮膚の炎症が全身に広がっている場合や症状が重い場合には、内服薬や注射による全身的な治療が必要になります。体の内側から真菌に働きかけ、症状の改善を目指します。

治療にかかる期間は犬や猫の状態によってさまざまです軽いケースでは数週間、長引くと数ヶ月におよぶこともあります。
皮膚の症状が落ち着いたあと、培養検査やPCR検査で2回連続して陰性が確認されれば、治療終了です。

 

ご家庭で気をつけたいこと


皮膚糸状菌は、毛やフケを通じて周囲に広がることがあります。特に注意したいのは、環境中に残った菌による再感染です。感染の再発を防ぐために、以下のようなケアを心がけましょう。

こまめに掃除を行い、落ちた毛やフケをしっかり取り除く
・掃除機を使ったあとに除菌タイプの拭き取りをするとより安心
治療が終わるまでは、他の動物と接触させないように隔離する
・犬や猫に触れた後は、手洗いや消毒をしっかり行う

皮膚糸状菌は目に見えないうえに、環境中でも長く生存する力を持っています。だからこそ、日々のケアがとても大切になります。

 

おわりに|皮膚糸状菌症から愛犬・愛猫を守るために


皮膚糸状菌症は、適切な診断と治療を行えば完治が目指せる病気です。
ただし、発症した部位によっては気づかれにくく、症状が進行してしまう場合や、同居している動物やご家族に感染が広がってしまうこともあります。
そのため、日頃から愛犬・愛猫とこまめにスキンシップをとり、皮膚や被毛の変化に気づいてあげることがとても大切です。

もしも気になる症状やご不安なことがありましたら、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

 

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<参考文献>

Moriello KA, Coyner K, Paterson S, Mignon B. Diagnosis and treatment of dermatophytosis in dogs and cats.: Clinical Consensus Guidelines of the World Association for Veterinary Dermatology. Vet Dermatol. 2017 Jun;28(3):266-e68.

 
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