大型犬に多く、なんの前触れもなく突然起こります。
さっきまで大丈夫だったのに・・・というのが飼い主様がよくおっしゃられることですが、いきなりお腹がパンパンになって、よだれがだらだら出て、何回も吐きたそうにしているけれど出ないといった症状が顕著にあらわれます。時間の経過とともにどんどん元気もなくなってきます。
病院についた頃にはもう一人で立つことも出来ないぐらい、急速に症状は進行します。
胃捻転は手術の危険性、術後のリスク、そしてご料金など様々なことをご説明差し上げなければいけないのでしょうが、実際、生存確率は時間との勝負になってきますので、そういったご説明をしながら、同時に手術も進めていくため(事実、説明をしながら麻酔をかけ始めることもあります)、治療に関して事後承諾になってしまうことも多々あります。それくらい緊急を要するものであるとご理解ください。
手術が無事終わっても、不整脈が出たり、肺炎を起こしたりと色々な合併症が出現します。
ご自宅のワンちゃんが捻転を起こしたかもしれないと思われたときは、それなりの覚悟をして来院してください。
今回のワンちゃんも来院して5分後にはもう手術台の上にいました。 麻酔をかけ、消毒をしてお腹を切開していきます。
バスケットボールが2個か3個ぐらい入りそうなぐらい胃が拡張し、胃全体の血流も損なわれている為、色もあまりよくありません。
よく針を刺して抜くようなシーンが文献にもありますが、それでは間に合わないので、こういった場合真っ先にメスで胃を切開し、ガスと内容物の大半を胃の外に摘出し、胃の血流を回復させます。とにかくここまでは最短で行います。今回のケースでは、ここまででの所要時間は来院後15分後ぐらいでした。
胃が捻転していると、体の中の構造が正常とまるっきり異なるため、位置関係をまず整復し、血流が元に戻るか確認します。
脾臓という臓器は、胃の側面に接しており、捻転を起こしている場合、脾臓自体も血流が悪くなり、切除しなければならなくなります。
脾臓自体はもともと大した役目をしているわけではないので、摘出しても後遺症が残ることはありません。
ここまでくれば、麻酔が安定していればあとは丁寧に手術を進めていきます。
胃の中に残った内容物を除去するのと同時に、口からチューブを入れて胃まで到達できるか確認し、チューブからも内容物を吸引します。
全ての作業が適切に行われたか確認した後、胃を縫合していきます。
再度捻転を起こさないように、胃と腹壁を糸で縫合し固定します。
胃だけでなく、腸管にも多量のガスが入っているので、念のため抜きます。
写真ではわかりにくいですが、腸に入る血管に拍動が戻ってくるのが感じられます。
すべてが整復し終わったあとです。あとは閉腹して終了です。