「最近、うちの猫がトイレにいる時間が長い気がする」「おしっこの色が濃いかも?」そんなちょっとした変化に気づいたことはありませんか?
実は、猫は泌尿器のトラブルを起こしやすい動物です。初期の症状は見過ごされがちですが、放っておくと命に関わる深刻な状態へと進行することもあります。
また、猫は体調不良を隠そうとする傾向があるため、ぱっと見では元気そうに見えても、実は体に異変を抱えているケースも少なくありません。
そこで今回は、猫に泌尿器の病気が多い理由と、飼い主様が早期に気づくためのポイント、自宅でできる予防法、そして病院での検査・治療について詳しく解説します。
■目次
猫が泌尿器の病気になりやすい背景には、体質や生活環境、そしてストレスといった複数の要因が関係しています。
まず、猫はもともと砂漠地帯に生息し、限られた水分でも暮らせるよう「尿を濃縮して排出する能力」が発達しています。この体質は尿が濃くなりやすく、膀胱や腎臓に負担がかかりやすい一面もあります。
現代の室内飼育では、清潔な水をいつでも与えられる環境が整っていますが、この体質的な特徴は変わらないため、泌尿器疾患のリスクは依然として存在します。
また、トイレの環境が気に入らなかったり、生活環境に変化があったりすると、強いストレスを感じてしまうのも猫の特徴です。ストレスは排尿を我慢させたり、膀胱の炎症を引き起こしたりする要因になります。
さらに、オス猫は尿道が細長く、途中で曲がっているため、尿路に小さな結晶や炎症があるだけでも詰まりやすく、尿道閉塞(尿が出なくなる状態)を起こしやすい傾向があります。これは命に関わることもあるため、特に注意が必要です。
このように、猫の泌尿器疾患はさまざまな要因が重なって起こりやすい病気です。
猫の泌尿器疾患は、以下のような行動やサインとして現れることがあります。
・トイレに何度も行くが、ほとんど尿が出ていない
・排尿時に痛そうな表情や声を出す
・トイレ以外の場所でおしっこをしてしまう
・尿の色が赤っぽい、濁っている、量が極端に少ない
・トイレで長時間うずくまっている
・排尿後に陰部をなめる回数が増えた
また、以下のような間接的な症状にも要注意です。
・食欲がない、元気がない
・抱っこやお腹を触られるのを嫌がる
・いつもより隠れる時間が長い
「ちょっと様子が変かも」と思ったら、念のため病院で相談してみるのが安心です。
猫に多い泌尿器疾患には、以下のようなものがあります。
◆ 膀胱炎 (特発性膀胱炎を含む)
もっとも多く見られる病気で、ストレスや環境の変化によっても起こります。原因が特定できない「特発性膀胱炎」も多くみられます。
▼膀胱炎についてはこちらで解説しています
◆ 尿路結石
尿中のミネラル成分が固まって結石となり、膀胱や尿道、尿管に詰まることがあります。特にオス猫では尿道閉塞を起こす危険性が高いです。
▼尿路結石症についてはこちらで解説しています
◆ 尿道閉塞
尿道が石や粘液で完全に詰まり、尿が出なくなる状態です。これは「一刻を争う緊急事態」であり、数時間のうちに腎機能障害や中毒症状が進行し、命を落とす危険性もあります。
▼尿道閉塞についてはこちらで解説しています
◆ 慢性腎臓病
高齢の猫に多く見られる病気で、腎臓の機能が徐々に低下していきます。初期には症状が出にくいものの、水をよく飲む・尿の量が多い・食欲不振・体重減少などのサインが現れてきます。
▼慢性腎臓病についてはこちらで解説しています
繰り返す膀胱炎や結石がある場合は、生活習慣や体質に問題がある可能性が高く、再発予防の対策が重要になります。
猫の泌尿器の病気を防ぐためには、日常のちょっとした工夫がとても大切です。病気になってからの治療だけでなく、「なりにくい体づくり」を目指すことが、愛猫の健康を長く守ることにつながります。
◆ 水分摂取を増やす工夫をしよう
泌尿器の健康を保つためには、しっかり水分を摂ることが何より重要です。
・ウェットフードの併用
・1ヶ所だけでなく、家の数カ所に水飲み場を設置
・好みの器や、流れる水が出る自動給水器を試してみる
猫によって好みが違うため、置き場所や器の材質を変えてみるのもおすすめです。
光が丘動物病院グループでは、ペット向け家電ブランド「homerunPET」と提携し、パートナー病院としてウォーターファウンテンなどの展示販売も行っています。対象製品はパートナー病院限定の特別価格でご購入いただけますので、興味のある方はお気軽にスタッフまでお声がけください。
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◆ トイレ環境は「静かで清潔」に
猫はとてもきれい好きで神経質な動物です。トイレが汚れていたり、落ち着かない場所にあるだけで、排尿を我慢してしまうこともあります。
・トイレはこまめに掃除し、常に清潔に保つ
・騒がしい場所は避け、静かな環境に設置
・頭数+1個のトイレを用意すると理想的
◆ ストレスをためない工夫を
泌尿器の病気は、実は「ストレス」とも深く関係しています。引っ越しや来客、音、トイレ環境の変化など、猫にとってはちょっとしたことでも大きなストレスになります。
・環境の変化はできるだけ少なく
・安心できる隠れ場所や高い場所を用意
・飼い主様とのスキンシップの時間も大切に
また、退屈もストレスの原因になるため、遊びの時間や上下運動ができるスペースづくりも意識しましょう。
◆ フードと体重管理にも注目
食事内容や肥満も、泌尿器トラブルのリスクに直結します。栄養バランスの整った総合栄養食を与えることはもちろん、必要に応じて「尿路ケア用の療法食」に切り替えることも検討しましょう。
ただし、療法食はあくまで特定の疾患や体質に合わせて設計されたフードです。自己判断での使用は逆効果になることもあるため、必ず獣医師の診断と指示のもとで使用することが大切です。
泌尿器のトラブルが疑われる場合、病院では以下のような検査・治療を行います。
〈主な検査内容〉
泌尿器の異常が疑われる場合、以下のような検査を組み合わせて原因を突き止めます。
・尿検査:尿の色・濃さ・pH・細菌・結晶・血尿の有無などを確認し、膀胱炎や結石の有無を調べます。
・血液検査:腎機能や脱水状態を把握し、慢性腎臓病の早期発見にもつながります。
・画像検査(X線・超音波):膀胱や腎臓に結石や腫瘍がないかを確認します。尿道の閉塞や膀胱の状態も視覚的に把握できます。
〈主な治療方法〉
診断結果に応じて、治療方法も異なります。軽度の膀胱炎であれば内服薬や食事療法だけで治ることもありますが、重症の場合や尿が出ない状態(尿閉)のときには緊急処置が必要です。
・内科的治療:抗菌薬、鎮痛薬、療法食の導入、水分補給のための点滴など。
・カテーテル処置:尿が出ない場合は、カテーテルで膀胱内の尿を排出。特にオス猫では頻繁に起こり得るため注意が必要です。
・再発予防のための管理:症状が治まったあとも、定期的な尿検査や食事管理を続けることが大切です。
泌尿器の病気は、発見が遅れると腎臓に負担がかかり、命に関わる重篤な状態に進行することもあります。
そのため、症状が出る前の“未病”の段階で異常を見つけることが、早期治療のカギになります。
光が丘動物病院では、猫ちゃん専用の健康診断コースをご用意しています。
年齢や体調に合わせて検査内容を選べるので、「まだ若いから大丈夫」と思っている方にもおすすめです。
猫の泌尿器の病気は、体質・生活環境・ストレスなどが複雑に関わり合い、気づきにくいまま進行してしまうことがあります。
しかし、日頃のちょっとした観察やケアの工夫で、予防や早期発見につなげることは十分に可能です。
「なんだか普段と違うかも」と感じたら、どうか迷わずご相談ください。光が丘動物病院では、猫ちゃんと飼い主様に寄り添いながら、丁寧な診療と予防のサポートを行っています。
また、定期的な健康診断は、病気の早期発見と長生きの大切なカギになります。この機会に、【猫の健康診断キャンペーン】もぜひご活用ください。
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